４４：嫌いになれたら 〜N〜 ページ4
何となく…勘…ってのか？
ドアを締める瞬間のAの目が泣きそうだった気がして…。
やっぱ気になってタバコを買いに寄ったコンビニの駐車場で電話をかけた。
出ない事で、俺の勘は当たったんじゃないかって心配になって。
風呂って可能性もあるのに、とにかく気が気じゃなくて、しつこく電話をかけまくる。
やっと電話に出たAは明らかに涙声で…。
上手くはぐらかしたつもりでしょうが…
俺をなめんじゃないよ？
どんだけお前の事好きだと思ってんの？
来た道をまた戻って近所のコインパーキングに車を停めて走った。
野球でもこんな一生懸命走んないよ、俺。
マンションの住人が丁度いてオートロックをすり抜け、エレベーターで３階へ。
息を切らしてドアの前に立って、肩を上下に揺らしたままインターフォンを連打すると、ゆっくり開いたドア。
そのドアを掴んで、隙間に片足を突っ込んだ。
「…はぁ…こら…か…くにん…しな…さいよ。」
「え？！二宮和也？」
「ちょ…おじゃま…する。」
玄関先で唖然とするAを追い越し、ワンルームにあるソファにドカッと座った。
「どうして？」
「先に、水…頂戴？」
大分…呼吸が整ってきたや。
コトンとテーブルに水が入ったグラスが置かれ、一気飲み干した。
「もっと飲む？」
「いや…大丈夫。」
そう、俺は大丈夫。
けど…
「Aは大丈夫じゃないでしょ？」
うさちゃんでもあるまいし、そんな真っ赤なお目目でさ？
「ううん。大丈夫。」
「無理してるってバレバレ。なんだそのブッサイクな顔。」
無理矢理笑った顔なんて見たかねぇんだよ。
さっき見た『やった！１番取れた！』って喜ぶ、子供みたいな無邪気な笑顔が見たいんだよ。
突っ立ってるAの目はどんどん潤んで、涙が一粒頬を伝った。
「頼むよ…頼むからさ…？ひとりで泣かないでよ…。」
立ち上がると黙って静かに涙を流すAを抱きしめた。
「俺をさ…利用でも何でもいいから…ひとりで泣くな。」
「…っ…。」
「お前がひとりで泣くくらいだったら…俺、いくらでも都合のいい男になるよ。」
「…そ…なの……できな…ぃ…。」
背中に回された手がギュッと俺のシャツを握る。
「いいんだ…それでいい。俺、お前に呼ばれたら真夜中だって明け方だって、すぐ来るから。」
「…っ……っく…。」
「利用してよ…ボロボロに傷つけられたって…俺、お前を嫌いなんてなれそうもねぇや。」
むしろ…嫌いになれたらラクになんのにな…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
