６９：頼って？〜N〜 ページ29
ジャケットの胸ポケットに入ってる携帯が震えて、AからのLINEを確認して、会社でも会える事に喜んだのも束の間…。
急いで社食をかき込んで、スキップしそうな勢いで階段を登った先に見えた負のオーラバンバン出てる、不機嫌丸出しのAさん。
「こら、冗談でもそんな事言わないの。さすがのニノちゃんもショックよ？」
タバコを揉み消して、Aの真後ろ…１段上に座って、足の間にAを入れた。
「ほれ、言ってみ？」
頭を撫でてやりながら背中に俺の身体を預ける様に抱きしめた。
「ちょ！見られたら『こんな所誰も来ないし、足音でわかるよ』」
Aの髪に鼻を埋めて大好きな匂いを感じる。
「…A？」
「私の名前がバレてる。」
不機嫌な声のままボソッと言った。
「ん？」
「ロッカールームの噂。」
あぁ…女の子の大好きな噂話ね。
「『二宮さんについに特定の彼女できたんだって！Aって名前らしいの！どうやらこの会社みたい！』」
ご丁寧に声真似までしてくれたAちゃん。
「あ〜…聞かれちゃった？」
大野さんと翔さんとの会話。
何も知らない大野さんに翔さんが口を滑らせて。
「私、『気をつけてね』って何回も言ったじゃない！」
「ごめんね？」
俺は別にバレてもいいんだけど…男除けになるし。
けど、女の嫉妬はそうもいかねぇわな…。
でも…もう少し俺を頼って？
俺にAを守らせてよ…。
「イヤ！面倒くさいのはイヤなの。面倒くさい事態になるんだったら別れ『ありえねぇ』」
なんでそんな事で別れなきゃなんねぇんだよ。
俺がどんだけ…
どんだけ頑張ったんだと思ってんだよ…。
自分の好きな人が、他の人を思ってるのって…
どんだけキツイか…
どんだけツライか…
お前だってわかってんだろうが。
「これからは気をつける。」
「もう遅いでしょ？」
「違う噂流しとくわ…。だからさ？『別れる』なんて言わないでくれよ…。」
「…ん。」
短く返事をしたAから離れて、立ち上がり隣に座った。
涙目のA抱きしめてやり頭を撫でる。
「A…。」
「うん？」
「今日は金曜だし…夜迎え行く。」
「…ん。」
「明日は横浜デートのリベンジすっから、可愛い服用意しとけ。」
Aは何着ても可愛いんだけどさ？
そんなセリフを俺がサラッと言ったら、それこそ雨やまないわ…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
