６０：和也くん ページ20
この人の私を見つめる優しい目を…
あたたかい手を…
信じてみようって…
そう思った。
「…A？」
私を抱きしめる腕がちょっと震えてて、首筋にくっつけられてる所為か声がくもってる。
「ん？」
「とりあえず…『二宮和也』呼びはやめようか？」
「…何で？」
「『何で？』って…お前…。彼氏をフルネーム呼びってどんだけだよ？」
子供みたいに不貞腐れた様に言うから思わず、クスッと笑ってしまう。
「そういう人がいてもいいんじゃない？」
「まぁ…普通いねぇからいいか…っておい、コラ。」
「ふふふ…んじゃ？二宮でいい？」
「それもあり得ないでしょうよ？Aが『二宮』になってもそう呼ぶのかよ…。」
ん？なんかこの人サラッとすごい事言ったよ？
「おい…突っ込めよ…恥ずかしいじゃねぇか。」
「え…？」
『突っ込め』ってどこを？
どういう風に？
「え…っと…まぁ…ニノちゃんも３０ですし…ね？それなりに…？って事です。」
「…はぁ…そうですか…。」
「お前…なんでいきなりそんな？」
「だって…。」
いきなり…そんな…ねぇ？
「とにかく！『和也くん』って名前で呼ぼうか？」
「イヤ…言いにくい。」
「あんた…散々フルネーム呼びしといて…。」
大袈裟にため息をついて、私から離れると…
「帰ろっか？続きはゆっくり車の中で討論しましょ？」
優しく微笑んで右手を差し出すから、そっと左手を重ねた。
・・・「はい、却下〜。『ナリカズ』って何よ。何で逆にする必要があんのよ。」
「えぇ〜。」
「お前…どうしても『和也くん』って呼びたくねぇの？」
半分諦めの入った顔でため息をつきながら、コトンとテーブルにマグカップを置いた。
帰りの車の中でも散々言い合って、いきなり思いたったのか、
『俺んち連れてってもい？』
って甘えた様に言うから頷くしかなくて。
でも、私の心の中を読んだのか…
『大丈夫。今日は一緒に寝てくれるだけでいい。』
そう言って本当に嬉しそうに笑った。
そして…二宮和也の家についても呼び方で揉めてる…。
「…そうじゃないけど…。」
「唇尖らせるのやめなさい。可愛いお顔が台無しでしょうよ。」
頬をムニ〜ッてする。
「はい、言えるよね？可愛く『和也くん』」
胡散臭いにっこり笑顔は『言え』と脅してると変わりない。
「…か…かず…なり……くん。」
なんか今更で…
は…恥ずかし過ぎる。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
