５８：昇格 ページ18
二宮和也の手はやっぱりあったかい。
今日は本当にあなたに救われたね…。
…今日だけじゃない…
きっと…あの日からずっと…。
徹にしても千里にしても…
どっかでずっと不信感はあって。
でも、それを表に出さず飲み込んでた。
いいコでいようと…い続けようと…
そうしなきゃダメなんだって思ってた。
だって…周りの皆はそういういいコな私を期待して、そういうコだって思ってるから…
その期待に応えるのが当たり前だと思ってた。
どんなに無理して自分を偽っても…。
それが私の存在価値だって…。
「なぁ…？」
「うん？」
「…お前にあんな事あって弱ってるトコにつけ込んで…卑怯だって自分でも思うけど…。」
何となく、何を言われるのか予想ができるのは、私が大人になったから？
私の手をギュッとキツく握り、小さくため息を吐いた。
「…そろそろ…さ？俺を彼氏に昇格させてくんねぇかな？」
「…。」
「完璧じゃなくてもいい。ちょっとでも俺を好きでいてくれるなら…ちゃんと付き合ってくんねぇかな？」
夜景がだんだんボヤけてきて、ゆっくりゆっくりそちらに顔を向けると…
やっぱり二宮和也の顔もボヤけてて…。
「焦るつもりも、焦らせるつもりもなかったけど…。」
そこまで言うと握ってた手を離して、そっと私を抱き寄せた。
「ちょ、こんな所で！見られちゃう！」
「いいよ、見られたって。それにお互い様だろ？」
二宮和也の肩越しにチラホラいるカップルを見ると…
うん…お互い様だ…。
「お前が傷ついたり…悲しんだりしてる時に、当たり前にそばにいて抱きしめてやれる関係になりたい。」
「…今は…違うの？」
「ちげぇだろ？友達以上恋人未満？っての？とちゃんとした恋人って。」
「うん。確かに今の関係って曖昧だね…。」
友達でも恋人でもない…。
「A…？」
「ん？」
「『うん』は？」
「ん？」
「『ん？』じゃなくて『うん』」
「…。」
二宮和也の事は嫌いじゃないし、一緒にいて気を張らなくてもいい関係ってすごく心地いい。
けどそれって…曖昧な関係だからじゃないのかな？
この関係に名前が付いたら、今みたいにいられなくない？
よく見せたい…
可愛い女でいたい…
嫌われたくない…
そんな事ばっかり考える…。
それに嫉妬なんかの醜い感情も恋愛には必ずついて回る。
「大丈夫…俺を信じて？どんなお前も大事にするから…。」
きっと私の考えてる事なんてお見通しなんだろうね？
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
