５７：作戦 〜N〜 ページ17
Aの手を握ってベンチがある場所まで移動する。
「ここどこ？」
「ん〜…山ん中？(笑)」
「そんなの知ってる！てか、わかる！」
「ククク…Aちゃん？ここ座って？」
展望台になってるここからは夜景が綺麗に見えて。
夏場という事でチラホラカップルもいたり…。
「うわ〜…綺麗。」
『座って？』って言ったのに、柵に駆け寄ったA。
「でしょ？本当は横浜でもって思ったけど、お前の顔がね…。」
「うるさい！」
展望台の柵に手をかけて夜景を見下ろすAの後ろ姿を見ながら、さっき吸えなかったタバコに火を着けた。
「…なぁ…？」
「うん？」
「お前…さっき何か夢見てた？」
真後ろにいる俺を振り返ったAは真顔だっったけど『ふふふ』って笑って…
「秘密。」
って子供みたいなあどけない笑顔を俺に向けて。
「そんな楽しい夢だった？」
「ん？何で？」
「笑ってたから？」
「嘘？！」
「ホント。」
「うわ〜…恥ずかしい。」
恥ずかしそうな顔を隠す様に、また夜景に顔を向けた。
短くなったタバコを地面で揉み消して、携帯灰皿に入れた。
俺もベンチからAの隣に立つ。
「なぁ…どんな夢？」
「ふふ…意外としつこいね？」
「え？知らなかった？」
「うん。」
「しつこいから…こうやって他の男が好きなお前を追っかけてんだろ？前の俺は…来るモノは選んだけど、去るモノは追っかけなかったからな。」
夜景向けてた顔を俺に向けて。
「二宮和也…？」
「うん？」
「ありがとう。」
少し潤んだ目でそれだけ言って…
また夜景に顔を向けるから手を握った。
「俺さ…？」
「…ん？」
「色々…作戦？ってか…押してもダメなら引いてみな…的なさ？小細工考えたりもして…。」
どうにかしたいって…
どうにかしてAに俺を『好き』だと言わせたくて…。
「けど、引いたらこうやって会えねぇし…電話もできないし…。そんなの耐えらんねぇから作戦は決行しなかったんだけど…。」
引いたら、せっかく縮んだ距離がまた広がってくんじゃないかって怖かった。
「やっぱさ？男なら真っ向勝負だろ？」
「ふふふ。そうなの？」
「あぁ。俺は俺のありのままで真っ向勝負。」
「…そっか…。強いんだね…。」
「いや…お前に惚れてからかなり女々しいよ？俺…。」
３０年生きて初めて知る感情ばっかりだ。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
