５６：寝言 〜N〜 ページ16
泣き止んだAを助手席に移動させて車を発進させた。
「ほら、心細いだろ？特別。」
左手をヒラヒラさせると、思いの外、素直に手を握ったA。
もっと悪態をつくかと思ったけど…。
「お前の顔がひでぇから行き先変更。」
本当は横浜に夜景でも…
なぁんて思ってたけど。
「あんたの顔は元からひどい。」
「うわっ…Aちゃんひどっ。ニノちゃんトオルには勝ったって思ったけど？」
「どっこいどっこい。」
やっといつものA。
俺とAはこうでないとね…。
暫くお互い無言で車を走らせてると、俺の手を握るAの手の力がフッと抜けた。
チラっと左側を見ると眠ってしまったA。
やっぱ…無理してたんだな…。
信号待ちで素早くシートベルトを外し、ジャケットを脱いでAにかけた。
エアコンがガンガンかかってる車のオーディオからは切ないラブバラードが聞こえてきて…。
どうせなら俺を応援してくれる様な歌にしようと、オーディオを操作して目的地まで車を走らせた。
・・・目的地に着き、窓を全開にしてエンジンを切った。
タバコを吸おうと…
あ…ジャケットの中だ…。
Aを起こさない様にそっと手伸ばし…
「……かず……り…。」
思わず伸ばした手を引っ込めてAの顔を見ると、微かに笑ってる。
頼む…頼みますよ…Aさん。
無防備な寝顔見せられて、寝言で俺の名前呼ぶって…
期待しちゃうでしょうよ…。
いい？
俺…期待してもいいの？
項垂れて頭をハンドルに押しつけてたけど、やっぱりAが気になってチラッと横目で見る。
無意識に手を伸ばして…
頬を撫でる…
都会の喧騒も聞こえない山の中…
俺のドクンドクンって胸の音が異様に響く。
ゆっくり顔を近づけて、Aの唇まであと２０センチ…
ダメだ…。
ここで負けたらダメだ…。
今までの努力と我慢が無駄になっちまう。
俺の事が好きなAとしたいんだ…そう思ってたじゃん。
「ん〜…痛い！」
撫でていたAの頬をムニ〜ッて摘まむ。
「はいはい、起きようか？Aちゃん？」
俺の気が確かなうちに起こしとこ。
「痛い！もっと優しく起こして！」
「え？いいの？ちゅぅで起こしてもいいの？」
「…ダメ…。」
唇を尖らして恨めしそうに俺を見る。
「でしょ？んなら文句言わない。」
『降りよ？』頭をポンポンしながらそう言って車を降りた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1035人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
