５３：泣きたくない ページ13
なんとなく気まずい空気の中…
それでも時折、毒舌で冗談を言い合いながらご飯を食べ終えて店を出た。
当たり前に繋がれる手は、男の人なのにまぁるくて小さめな柔らかい手。
「あったかい…。」
「ん？」
「二宮和也の手はいっつもあったいね？心が冷たいから？」
『ふふふ』って笑いながらいつもみたいに冗談っぽく言った。
「普段は冷たいのよ？心があったいコだから。ニノちゃんて。」
「えぇ〜…そんな事『お前だから』」
また冗談で返そうとしたのに…
「お前と繋ぐと…ドキドキして体温上がるからじゃね？」
真剣に返されると…どうしていいか…。
「も…もう！またそんな『A？』」
一瞬、時が止まった…。
いや…心臓も止まった…？
そのくらいの衝撃を受けて動けない。
「A？どうした？…お前、顔色悪りぃぞ？」
目の前には心配そうな二宮和也。
二宮和也には聞こえてなかったのか…
って事はやっぱり聞き間違い？
「やっぱりAだ。千里？」
背後から聞こえる私を呼ぶ声…。
手に汗がいっぱいなのに、そんなのもお構い無しに二宮和也の手をキツく握る。
さすがに聞こえたのか振り返った二宮和也は、多分全てを悟ったと思う。
千「A！」
千里に呼ばれて手を離し振り返ろうとしたけど、二宮和也はそれを許してくれず手を握ったまま振り返る為に場所を移動してくれた。
「久しぶりね？」
千「そうよ？だって連絡しても『忙しい』ばっかりで。」
「うん。仕事とか…色々ね？」
嘘ばっかり…。
休日出勤なんてほとんどない会社と部署。
千「ねね？彼氏？カッコいいね！Aなら絶対直ぐできると思ってた。」
は？何それ…。
私がどれだけ…。
奥歯を噛みしめて口をギュッと固く閉じた。
泣かない様に…。
千「もうね？少しお腹出てきたの。触って触って？」
無邪気に言う千里はやっぱり天使の仮面を被った悪魔？
あんたが簡単に身体を許したから…私が…。
まぁ…私も人の事言えないか…。
徹「A？彼は…？」
二宮和也を上から下まで品定めする様に見て…。
てかさ？あんたにそれを説明する理由がどこにある？
「二宮和也さん。同じ会社の人。」
千「ね？彼？彼なんでしょ？手繋いで…仲がいいのね？」
徹「同じ会社…って事は…あぁ…あそこか。」
自分が官僚でプライドが高い徹はバカにした様に鼻で笑った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
