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私はさっき涼介くんから来たメッセージを読み返した。
“涼介いつもの吹き抜け通り抜けたら、うちの部屋番号と4桁の暗証番号押して
…部屋番号は、たしか2001。
さきほど、涼介くんが消えていったエントランスにたどり着き、自動ドアを抜けると、大きな吹き抜けのホールがあった。
私は一般人なんだから、普通の住人のフリをすればいいんだけど、ドキドキが止まらない。
ここを確か、右に行くとエレベーターだったよね…
涼介エレベーターの前で待ってる
涼介くんからのメッセージを見ながら、記憶をたどって行くと、エレベーターホールに繋がるサブエントランスに出た。
ここのタッチパネルで部屋番号と暗証番号を入れれば、涼介くんがそこで待ってるはず。
部屋番号と、、、
涼介暗証番号はね、
涼介ちょっと照れるんだけど、、、
涼介Aの誕生日
「えっと…」
やや覚束ない手つきで番号を押すと、ガチャっと音がして、エレベーターホールのドアが開錠された。
そしてそこに立っていた黒ずくめの男の人が、私を振り向いてにこっと笑った。
すぐにエレベーターが開き、涼介くんと一緒に乗り込む。
涼介くんが行き先階を押し、エレベーターのドアが閉まった。
と同時に、涼介くんと目が合う。
涼介くんは優しい笑みを浮かべて、
「やっと、、、二人になれたね?」
そう言った。
「…うん」
その笑顔に見とれてしまいそうになって、私は慌てて目を逸らした。
…どうしよう。
今更だけど、二人の空間がすごく気恥ずかしい。
いつもは会った瞬間から車だからずっと二人の空間だけど、今日は離れてたから、かな…
…近づきたいような、恥ずかしいような。
そんな感覚。
「…ケータリングって、どんなものがあるの?」
ドキドキをごまかそうと、そう切り出してみる。
「…ん〜、なんでもあるよ」
「…そっか。…楽しみ」
「………」
けれど、会話はすぐに終わってしまった。
…そうなると今度は急に不安になって、くっつきたくなる。
…どうしようかな。
私から手、繋いじゃおうか。
でもまだ家じゃないし…
そうしてほとんど無言のまま、20階に到着し、エレベーターを降りた。
いつもはもう少し楽しくお話ししながらここを通るのにな…
そう思いながら、部屋の鍵を開ける涼介くんを見ていた。
「…どうぞ」
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作者名:みあ | 作成日時:2018年7月30日 9時