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普段、車にしか乗らない涼介くんのために、私にできることは、なるべく人が少ない最短距離を確実に通ること。
住宅街の中だから道は入り組んでいるけど、アプリによれば10分ほどで駅に着く。
さっきと違い、車は通らないものの少し大きめな道に出たからか、何人かとすれ違いながら、私は地図とにらめっこで先を急いだ。
涼介くんは50メートルくらい後ろをついてくる。
…が。
途中で曲がり角を誤ってしまったらしい。
駅方面へ行くつもりが、いつのまにかそれてしまっていた。
涼介A、こっちでいいの?
後ろを歩く彼からのLINE。
Aうーん、、、人に聞いてみるね!
不安になった私は、すれ違うスーツ姿の男性に声をかけた。
「あの、すみません。◯◯駅はこっちですか？」
「…ええと、違います、少し戻って、二つ目の角…赤い屋根見えます？」
その男性は丁寧に、私に目線を合わせて話してくれた。
「あ、はいわかります！」
「そこを左に曲がった方向ですよ」
いい人でよかった。
最初はそう思ったのだけど。
「ありがとうございまし…」
「ていうか、お姉さん、よかったら駅まで送りましょうか」
「あ、いえ…大丈夫です！」
連れがいます、とも言えず、とりあえず断る。
だけどその人は意外と強引だった。
「遠慮しなくていいよ、てか、すっごいかわいいよね？僕すごい好み。あ、こっちだから」
そう言って、肩をつかまえられ、強引に歩かされる。
やだっ、気持ち悪い…
「いいです、本当に！もうわかったので大丈夫です」
「いやいや、せっかくだしさ、お茶でもどう？てかOLさん？学生？」
完全にナンパじゃん。…怖いし、どうしよう、、、
結構強く断っても諦めてくれず、このまま駅までくっついて歩かなきゃいけないのかな、と恐怖がこみ上げてきた時。
「おい」
聞いたことのない低い声が聞こえた。
ぱっと振り返ると同時に、男性の腕が誰かによってむんずとつかまれ、ひっぺがされる。
ほっとして相手の顔を見ると、、それは、背筋が怖くなるほどの怒りオーラを発した涼介くんだった。
「…触ってんじゃねぇよ、クソジジイ」
「…！！…」
涼介くん…！
「いってぇなぁ…何すんだよ、おまえには関係ねえだろ」
男性は往生際悪く食ってかかり、涼介くんは明らかにイラついた表情で口を開いた。
なにを言うつもり…？
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作者名：みあ | 作成日時：2018年7月30日 9時
