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それは、都心の大通りから何本か入った裏路地にある。
言うなれば住宅地で、たまにこじんまりした事務所が点在しているような地域。
その中でひょろっと頭一つ出ている4階建のマンション。
その傍の、日中でもほとんど影になっている、6台くらいしか停まれないパーキング。
そこが、私と彼のいつもの待ち合わせ場所だった。
…えと、今日は16時だよね。
彼の仕事終わりの時間はいつも違うから、彼からのLINEを遡って確認する。
私はといえば、今日は休みで買い物帰り。
とはいえ、買いたかった服はピンとくるものがなくて、アクセサリーを買っただけ。
彼がオシャレさんだと、色々気を使うんだよね。
そう思いながら、待ち合わせ場所に向かう。
家はたくさんあるのに、住民らしき人を見かけたことがないこの道。
そんな閑静な住宅街に入り、いつもの駐車場を見やる。
いつもなら、そこにはレトロなクラシックカーが停まってるんだけど…
いない?
…と思ったら、
キレイ目な黒のスウェード地のライダースに黒のパンツ、
黒のエンジニアブーツの、
…見慣れた背格好の人が、スマホを手に、電柱に寄りかかって立っていた。
首にはマフラーぐるぐる巻きのその人が、私に気づいて顔を上げる。
…視線が合うと彼はニコッと笑い、私は急に焦りを感じて小走りになった。
その人は、きれいな顔に不思議そうな表情を浮かべて、私を見ている。
周りに人はいないのだけど、用心して小声で話しかけた。
「…ちょ、車は?!」
いつもならここから車で大通りに出て、プライベートがしっかり確立できそうなお店で夕食を食べに行くのだ。
「あー、言ってなかったっけ?壊れた」
あっさりそう言う、某アイドルグループセンター。
「へっ?…本当に?ここまでどうやって来たの?」
「雄也とさっきまで仕事一緒だったから、近くで降ろしてもらった」
「そーなんだ…てか、素顔見えてるよ?」
「…そお?でもこれ、ぐるぐる巻きだし?けっこうバレないもんらしいから、いっかなって」
マフラーを指でつまんで見せ、キョトンとしてる彼に、私はだめだめ、と手を振った。
「だってここからどうやって移動するわけ?」
タクシーは長時間乗って顔バレ危険だからダメだし、、、そうなると一つしかない。
「…電車。…しかないじゃん?」
再びそう聞き返す彼(しつこいが某アイドルグループセンター)。
…本気で言ってます…?
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作者名:みあ | 作成日時:2018年7月30日 9時