限界短編集 (ページ15)

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素直　gt ページ15

騙すのが大好きな俺にとって、君は格好の的だ。
だが同時に君の素直さ、純粋さは俺に毒だ。
時に君を騙すことにさえ抵抗を覚えてしまう。
本当に君の純粋さを奪ってしまってもいいのか、君が君でなくなるのではないか。
gt「A」
貴女「ん？どうしたの？ぐっち？」
何度騙されたとしても君は俺を信じてくれる。
俺の呼ぶ声に反応してくれる。
gt「いや、呼んだだけだけど？」
貴女「あ、そうなんだ～」
俺が返事をすると君はつまらなさそうな顔をしてまた前を向いた。
君は素直だから思っていることがすぐに顔に出る。
だから知ってるんだ。
君は誰かに恋をしているんだって。
知ってるよ、君はあいつを見るときとてもキラキラとした顔をするんだって。
俺なんかじゃ作ることのできないような笑顔をあいつに向けてるんだって。
そして、君はまだ恋をしていることに気づいてないんだ。
だから、俺なんかと話していられる。
ああ、君が恋心に気づく前に俺に夢中になってくれたらいいのに。
いっそのこと閉じ込めてしまおうか？
俺としか会えないようにして、俺の言葉しか聞こえないようにしたら、君はこっちを向いてくれる？
あいつに向けるような…いや、あいつに見せるよりもずっときれいな笑顔を俺に見せてくれる？
貴女「ぐっち？大丈夫？」
見にくい考えをしていた俺の前には、君が心配そうにたたずんでいる。
今は…今だけは俺を見てくれているんだ。
あいつなんかじゃない俺を。
gt「ああ、大丈夫だ」
そう言って笑って見せると君も笑い返してくれた。
こんな純粋な君を汚すことなんてやはりできない。
だから、はやくその恋心に気づいてあいつと結ばれて、俺に諦めをつかせてくれよ。