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鳥。
そんな朝日のなかで、白い何かが舞っていたのだ。
ふとシオは手を伸ばした。届かない。じれったくなって身を乗り出した。――あと、指先一つ分。それと同時に、みしり、ときしむ音がした。傾く。開く。熱くなる。
なるほど、こういう「了」か。シオは、キナが物語の最後に書く「了」という字が好きだった。
「あぶねー！！！！！！！」
そんな静謐な終わりを切り裂くように声が割って入った。ぐい、と体を後ろ側に引っ張られたと思えば、次にシオの視界に映ったのは天井だった。
「う、うわあ、何やってんだよお……せっかく助かったってのに……生き残れたってのに……」
「誰です、アナタ」
今ので傷口が開いた。その痛みと、知らない者にいきなり引っ張られた不快感でシオは顔を顰めながら言う。
「連合の――んでも今更こんなん関係ねえよなあ。ん、というか、お前――」
その瞬間、ぶわりと強い風が吹き込み、鳥が――否。紙が一枚飛び込んできた。それは、起き上がろうとしたシオの顔と正面衝突する。苛立ち半分、引きはがすようにシオはそれを手に取り――それがどうした、としわくちゃに握りつぶして投げ飛ばした。どうやら終わった、という事だけがわかった。結局何もないじゃないか。姉に心の中で毒づく。
ふ、と後ろで笑い声がした。その声の主を睨みつける。存外若かった。どこかで見たような気もする。銀髪で、紫色の瞳の。
「――あー、いたたたたたた。もう一歩も歩けそうにないです。アナタに運んでもらいましょうかね」
そう言ってシオは彼に体重を預けた。そのついでに腹部に軽く肘鉄を入れる。いってえ、と軽く彼は呻き、少しぶつくさ言いながらシオを支えた。
「それで、お前の名前は？」
「シオです。アキノシオ」
「アキノシオ？」
「何ですか、別に変ったものでもないでしょう」
怪訝そうに返したシオに、彼は嬉し気に返した。
「アキノ、っていう名前の本当にすげえ人を知ってるから――ちょっと、嬉しくなったんだ」
そうして、他の人々がそうするように――美しい朝日の中を、二人は歩き出した。
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