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終_花に嵐と喩ふるならば ページ22
「――お前、あれでサイレンが聞こえなかったらどうするつもりだったんだ」
そんなの結果論だ。どうなっていたか？ どっちかの死体が転がってたで終わりだバーカ。そんな反論ができないのは、図星なので心情的に言い返せないのが半分、声は出るとは言え痛くて痛くて仕方がないから喉を使うのが億劫だというのが半分だった。けれど、喉まで登ってくるざらつきはもう、何度飲み下したって落ち着かない。
あの直後、政府軍のものであろう無線が鳴った。政府軍の降伏。そんな嘘のような結果を受け、日芽とヒビキの二人は第28裏図書館のある山から下山をしている最中だった。
「あと声さっさと直せよ。お前から声取ったら何が残るんだよ」
「元から何にも持ってない奴よりは残るじゃろうな、何かは」
振り返って日芽はヒビキを見た。言ってしまった、と思いはしたが後悔はなかった。喉のざらつきはもうない。目の前の彼も自分の言葉には何一つ後悔はしていなさそうだった。――馬鹿みたいだ。これでは、黙った方が損じゃないか。最初からそうだったじゃないか。黙った者負け、言った者勝ち。言葉を交わしても揉めるだけなのに、私たちは、言葉以外に相手のことを知る術を知らない――違う。語る以外に、聴く以外に、知る術は「ない」のだ。道理でこの世は不幸なわけだ。言葉、なんて不完全なものに自分の思いを託すしかないのだから。
「汚い声だな」
「誰かの歌声と同じじゃね」
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