甘い誕生日 (JUMP短編集)

Happy Birthday Ryosuke！ (1) ページ15

5月9日

アイドルになるために産まれてきた。

そう言っても言い過ぎじゃないくらいキラキラな彼。


だけど私といるときはゆるゆるな顔を見せてくれる愛しい人が今日25歳になった。









あと１時間もしないで5月9日が終わってしまう。


手にスーパーのビニール袋を下げで家路を急ぐ足。



『どうして今日だけでも早く帰れなかったの？』



とっても大切なこの日に残業していた自分に問い掛ける。



だけどそれは今考えても意味のないこと。



それよりも早く家に着くことだけを考えて出来るだけ急ぐ。


そして




運動不足なせいで住んでるマンションの目の前に着く頃にはもう走れないって思うくらい息が上がっていた。




その乱れる呼吸を整えながら自分の部屋の窓を見上げる。






一人暮らしなのに灯っている明かり。




それを見て緩む頬と早く彼に会いたい気持ちで足の疲れを忘れてエントランスを駆け抜け、自分の部屋を目指す。








「ただいまー」


久しぶりに会える嬉しさから大きくなる帰宅の声。



だけど、その言葉へは何も返ってこない。



いつもは彼が先に部屋に居る時は帰ってきたらすぐにリビングから顔を出してテレビとは違うゆるっとした笑顔でお迎えしてくれる。



なのに今日はそれがない。



不思議に思って明かりが点いてるリビングに進むとその理由がすぐに分かる。









待っていたのはゆるゆる笑顔の彼じゃなくて綺麗な瞳を閉じてすぅすぅ寝息を立てている可愛い彼。



その手には仕事の資料か何枚かの紙が床に落ちそうになりながら握られている。




その寝顔を見て連日の仕事の忙しさで荒れていた心が癒やされる。



そして


ソファーの肘掛けにもたれて寝ている彼の横にちょこんと座り改めて静かに挨拶。



「涼介くん。 ただいま。

今日もお仕事忙しかったのかな？」




この前会った時とはまた違った色になってる彼の柔らかな髪を撫でながらしばらくそのあどけない寝顔を眺めている。







だけど、ゆっくりとした時間を過ごしていたら気付けばあと少しで彼の誕生日が終わってしまう時刻。



急いで買ってきたものを袋から出してすぐに食べれるように準備してから冷蔵庫で冷やす。



そして、自分も部屋着に着替えてまた彼の横に。




準備は万端。



彼が起きるのを今か今かと待つ状態。

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