流星群【Hokuto.M】

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「あー疲れたぁ！」

「…樹くん、コピー用紙ホチキス留めしただけじゃん。」



明日の準備も済んで、それなりにホッとした帰り道。
前夜祭ってことで夕飯に誘われて、樹くんと2人で繁華街まで繰り出して来た。



「俺、あんま食にこだわりとか無いからさー。
全然合わせるから、何でも食べたいもん言ってね？」

「えーどうしよう！あ、タピオカ！」

「言ったばっかでアレだけど、Aちゃん俺よりセンス無いね。マジで。」

「なんで！？東京に来たら一度飲んでみたかったのに、まだ全然行けてないんだもん！！」

「いや、行けてないままブーム去ってんじゃん。」



東京に来て1年と少し。
いつもならまだまだ緊張する都心の繁華街も、なぜか樹くんと歩くと怖くなかった。
おしゃれな街のおしゃれな人たちの中でも、さらに目を引くキャラメル色の髪の毛。
細い体を包むブカブカのTシャツに、存在感のあるいくつものアクセサリー。

この街もきっと、樹くんの味方なんだろう。
たまにしか学校に来ないにもかかわらず、あの教室の中に漂う、圧倒的な「ホーム」の空気と同じように。



「タピオカだめなの！？えーじゃあどうしよう…」

「いや別にダメってことも無いけどさぁ…」



ブツブツ言いながらポケットに手を突っ込んで歩いていた樹くんが、路地裏に入ったところでピタリと足を止めた。



「え、どうしたの？」


樹くんの背中越しにヒョコッと前を覗き込んだ私を、「いや…！」なんて焦った声で引き止めようとする樹くん。けれどそれは一歩遅くて、その光景はまんまと私の目に映し出されてしまった。

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