23 ページ23
.
久しぶりの新規の客だった。
最近はリピーター優先の予約ですっかり枠が埋まってしまっていたのに、たまたま直前に、あの時間だけキャンセルが出たから。
同じ歳の女の子。
「ホテルのスイーツビュッフェに同行して欲しい」という希望で、2時間の予約。
…友達と行けよ。
なんでわざわざ、店の中でも時間あたりの料金が1番高い俺を指名して来たんだ。
まぁどうせ、どっかの金持ちのお嬢様の承認欲求なんだろう。
素人の彼氏には望めないスマートなエスコートと、1ミリたりとも不快な思いをさせない完璧なお姫様扱い。
オチの無い話を黙って何時間も聞いて欲しい。
それも、すれ違う女に悉く振り返られるような、とびきりのイケメンに。
そんなとこかな？
まぁ俺は自分の顔にそんなに自信があるわけでもないんだけど、中にはこんな個性の薄いパーツの集まった顔面を好んでくれる物好きもいるみたいだから、それはそれで素直にありがたく思ってる。
「不細工」と罵られるよりはいいに決まってる。
せめてできる努力は…と、スキンケアや体型管理、生活習慣なんかにも気を配るようになった。
服はクラブ側からの支給。
オーナーが勝手に見立てて買って来るから、俺は黙ってそれを着てる。
中には自分で購入して経費精算するヤツもいるみたいだけど、そんなのはプライベートで好きな服着ればいい話じゃない。
今の俺は、俺じゃないから。
誰かから見て「似合ってる」と思ってもらえるなら、そっちのが安心なんだよ。
ほら
こうやってどんどん俺は、「自分」ってもんを見失って行く。
流行りのブランド品やら人気の化粧品やら高価なワインやら、そんな上辺の会話を滑らかにするためだけの知識ばかりを積み重ねて、日に日に薄っぺらな人間へとなり下がる。
シンプルなシャツとスラックスにPRADAの革靴で向かった高級ホテル。
そこのエントランスで俺を待ち受けていたのは、何やら熊か何かに捕食される寸前みたいに青ざめた、
どこかで見たことのある、大人しそうな女の子だった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 739人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マヨ(プロフ) - YUUKIさん» わーぉ、ありがとうございます！！お気に入りのシーンはじゅったんとの公園ネイルです！（北斗わい）楽しんでもらえて嬉しいですーーー！！ (6月22日 9時) (
レス) id: 99f2c21ac8 (このIDを非表示/違反報告)
YUUKI(プロフ) - 今日全部読ませていただきましたが、めちゃくちゃ面白かったです！！ (6月21日 22時) (レス) @page50 id: 856434f156 (このIDを非表示/違反報告)
マヨ(プロフ) - まゆみんさん» ホントそれですねwwwいじけ虫ほっくんです！ (6月15日 21時) (レス) id: 99f2c21ac8 (このIDを非表示/違反報告)
まゆみん(プロフ) - 隣を取られたみたいで逃げましたね…笑 (6月15日 12時) (レス) id: 234c3a248a (このIDを非表示/違反報告)
マヨ(プロフ) - ミエさん» 初めまして！うわ〜ありがとうございます！「心鷲掴み」なんてめちゃくちゃ嬉しいです！いじけほっくんは置いておいて、しばらくじゅったんと青春する予定です、よろしく！（また松村担に怒られるヤツ） (6月15日 6時) (レス) id: 99f2c21ac8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マヨ
| 作成日時：2023年6月9日 0時
