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そのあとは大きな本屋さんまで歩いて、私は松村くんに、松村くんは私に似合いそうな文庫カバーを選んで、それぞれのプレゼントにした。
お互いサプライズなんてするガラじゃないし、まだ正式な恋人同士でも無いんだから、このぐらいが丁度いいんじゃない?なんて2人で話し合ってのことだったんだけど…
「……相手のイメージを問われた時にさぁ、真っ黒って、一般的にはあんまり選ばなくありません?」
本屋さんから出て、すぐに覗き見たラッピングの中身。
インク瓶をひっくり返したような漆黒の文庫カバーを手に、松村くんは戸惑いを隠し切れない苦笑いだ。
「いや、別に性格が暗いって言ってるわけじゃなくて…。松村くんの目、かな。」
「目?」
「そう。
涼しげなのに、黒目はクリクリしてて可愛いなぁって思ったから。」
「……。」
松村くんが照れてる隙に、私も自分へ贈られたラッピングの中をチラリと覗いてみる。
「わぁ、綺麗!」
水彩絵の具で塗ったような空色に、淡いパステルカラーの水玉がたくさん描かれた文庫カバー。
大きい丸や小さい丸が、まるで絵本の中のシャボン玉のようにフワフワと浮かんでいる。
優しい色味に、自然と笑みが溢れる。
「前はそういうの、苦手だったんだ。」
「え?」
「なんか、嘘くさくて。
綺麗事を絵に描いたらこんな柄なんだろう、なんて思って、敬遠してた。」
「はぁ…」
「けどAと会ってから、そういう色を見ても、本当に綺麗だと思えるようになった。
だから、それにした。」
松村くんが、薄い唇の端をキュッと上げて微笑む。柔らかく細められた切れ長の目が、驚く私のことを、さも愛おしそうに映した。
途端に今度はこちらが死ぬほど恥ずかしくなって、思わず俯いてしまう。
それを見た松村くんはどうも誤解したらしく、「気に入らないなら無理に使うことは無い」と、なんとも見当外れなフォローをしてくれた。
「違う違う!
は、恥ずかしくなっちゃっただけ!
すごく嬉しいよ!!嬉し過ぎて、もったいなくて使えないかも!!」
慌てたせいでうっかり出てしまった素直過ぎる言葉に、松村くんは「…なら良かった!」と、今度は白い歯が溢れるようなキラキラの笑顔を見せてくれた。
一見、まるで対局のようなデザインを選んだ私たち。
それでもきっと、お互いの気持ちはたったひとつだ。
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マヨ(プロフ) - あいりさん» こちらこそ、ありがとうございました!じゅったんカッコよく書けていたならよかったです(^^)モテない女がモテる男を書くのは大変でした…( ;´Д`) (2022年2月20日 0時) (レス) id: e79016e87d (このIDを非表示/違反報告)
あいり(プロフ) - マヨさん» ありがとうございます!読ませていただきました!やっぱり樹がかっこよすぎました🥹 (2022年2月19日 17時) (レス) id: 87926ffd93 (このIDを非表示/違反報告)
マヨ(プロフ) - あいりさん» ありがとうございます(^^)パス開けました〜! (2022年2月19日 10時) (レス) id: e79016e87d (このIDを非表示/違反報告)
あいり(プロフ) - 俺の可愛い妹で、俺らの大切なお姫様。にやられました😇パス教えて下さい🙇♀ (2022年2月19日 1時) (レス) id: 87926ffd93 (このIDを非表示/違反報告)
マヨ(プロフ) - 澪さん» お待たせ!!じゅったんとのデート書きました!!パスかけてあるから、読みたくなったら言ってくださーい!! (2022年2月18日 22時) (レス) id: e79016e87d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マヨ | 作成日時:2021年12月2日 1時