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Aはたいそうな読書家であった。こちらに越してくる前の学校でもよく本を読んでいたし、こちらでもそれは変わらなかった。
「どこだ……ここは……。」
そして現在、絶賛道に迷い中だった。
かるてと「あれ、Aさん?どっか行きたいの?」
現れたのは先ほど会釈を交わした生徒の一人だった。確か……同級生の。
「あ、そうです!図書室に行きたいんだけど……同じところをグルグルしてて。」
ふと、Aの頭には「この人の名前何だっけ」と浮かんだ。
まずい、正直なところ言葉を交わしたしるこさんといちはちさんしか分からない。
かるてと「図書室?こっからちょうど反対側だけど大丈夫?」
反対側……と呟き数秒固まった後、おもむろに体を図書室へ向けた。
「あっ……反対側……なるほど……ありがとう……。」
Aがふらふらと廊下を歩くのを見かねて、唯一の同級生は横に並んだ。
かるてと「心配だしちゃんと案内しますよ。ついでに学校案内もするけど時間ある?」
「一時間くらいなら……お願いしてもいいかな。」
同級生に着いて校舎を歩く。
こうして見ると、とても趣のある校舎だ。
窓からは自然豊かな風景が望め、教室のドアにはレトロガラスがはめ込まれており、狭い校庭のすぐ隣の講堂には褪せて味わいの深くなったステンドグラスが覗いている。
かるてと「ボロいと思ったでしょ。」
Aがきょろきょろと辺りを見回しているのを見て前方で笑った。
「ううん、今までいたところとは全然違って面白い。校舎が木造なのも新鮮だし、こんなにコンパクトな校庭もレトロガラスのドアも、初めて見た。」
嵐の時なんていろんな音がしそうだね、と窓を見ながら言う。
かるてと「嵐の日なんて音どころか校舎が崩れないか心配になるぞ、いつ山が土砂崩れ起こすかも分からんし。」
同級生はチラリと山に視線を向ける。釣られてAも外を見た。
かるてと「びっくりした?」
「……思ったより……ハードな生活でびっくりした。」
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まめこ(プロフ) - そらなぁさん» そらなぁさん、コメントありがとうございます!レス遅くなりすみません!発想を褒めてくださりありがとうございます!予定の調子が良ければ今月中にまた更新できると思いますので今後ともよろしくお願いいたします〜! (2021年3月12日 21時) (レス) id: 3aefbeea6b (このIDを非表示/違反報告)
そらなぁ - コメント失礼します。もう、読んでいてめちゃくちゃ楽しいです!bintrollのシェアハウスなんて私だったら絶対思いつかない設定なので、尊敬しながら読んでいます。体に気をつけながら更新頑張って下さい。 (2021年3月4日 23時) (レス) id: 9b06ee166f (このIDを非表示/違反報告)
こひまめこ(プロフ) - ひめかさん» ひめかさん、初コメントありがとうございます!嬉しいです!色々立て込んでいて更新が遅れている状況ですが、ひめかさんからコメントも頂いたのでできる限り近いうちに更新しますね!本当にありがとうございます! (2021年3月1日 20時) (レス) id: a66dababca (このIDを非表示/違反報告)
ひめか - 初めてコメントさせていただきます!キュンキュンしながら楽しませていただいております(^^)これからも楽しみにしてます! (2021年2月25日 15時) (レス) id: 45f6c41ced (このIDを非表示/違反報告)
こひまめこ(プロフ) - 言いそびれました!私もBinTRoLL大好きです!!!笑 この作品にたどり着いてくださり、誠にありがとうございます! (2021年1月29日 15時) (レス) id: a66dababca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2020年9月6日 14時