ねえ、 ページ26
.
「ねえ、死神」
「・・・・・」
「おーい」
「・・・・・」
「ちょっと、きいてる？」
ギターを抱えていた背中がようやく振り向く。
真昼間だというのにカーテンの閉め切られた薄暗い部屋に浮かぶのは、不機嫌にしかめられた顔。
「お前、その呼び方やめろって言うてるやろ」
「え？・・・あー」
だって、死神は死神なんだもん。
心のなかでつぶやいても、もう彼から生意気な返しが飛んでくることはない。
そのことをすこしさみしく思ったり・・・しないこともないけど。
１０年も前のことを思い出して、なんだか笑いそうになった。
世にも奇妙なあの七日間は、わたしが生きてきた時間のなかで、最もまぶしく光り輝いている。
今でもずっと。
「はー。死神あったかあい」
「おまっ、ちょっ、待っ」
ギターとばかり戯れるその背中にべたーっとくっつきにいくと、わたわたと慌て出す元・死神。
「距離感おかしいねんって、ほんまっ」
章大のひとみは、もう、凍りついてなんかいない。
あふれるような生命力に満ち満ちた、きれいな目。
「こんなんやからしぶやんとか亮とかいつまで経っても勘違いしたままやねん」
「べつに普通じゃん」
「普通ちゃうわ！ええ歳した女がなあ・・・」
「あいにく昔からこんなです〜」
「おれはお前の幼馴染ちゃうしな」
ふん、と鼻を鳴らす横顔。
だれよ、いろいろ弄って勝手にわたしたちの幼馴染になってた奴は。
「じゃあ、なんなの？」
「は？」
「しょうたはわたしの何なの？」
彼はふわっと頬を赤く染める。
林檎みたい。
とっさにそう思った。
「・・・っも、元死神に決まってるやろ！！」
ばーか！と叫んで、煙草を吸いにおもてに出ていってしまう。
なによそれ、子どもかっ！
とツッコミたくなる気持ちもやまやまなのだが、それ以前に、わたしはひどくもやもやしてしまうのだ。
「・・・ばーか」
取り残された彼の部屋のまんなかで、彼のにおいがするクッションを抱きしめる。
１０年。
あのときの、あのチョコレートの味を思い出して、胸が疼いた。
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眞光弓眸 - バレンタインらしい、とってもいい小説でした！ (2018年3月14日 21時) (
レス) id: f707b6af10 (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - 安紀子さん» 安紀子さん、はじめまして！こちらこそ、読んでいただいてありがとうございました！何かすこしでも届けられたものがあったなら幸いです！(^^) (2018年2月15日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - 安田ヨココさん» 安田ヨココさん、はじめまして！読んでくださってありがとうございます！そんなふうに言っていただけてうれしいです！おまけ、書き上がったら更新しますね(^^) (2018年2月15日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
安紀子(プロフ) - 初めまして(^^) 素敵な作品をありがとうございました。読み終えて、何だか暖かい気持ちになりました(*´ω｀*) (2018年2月15日 14時) (レス) id: 5200fb55a9 (このIDを非表示/違反報告)
安田ヨココ(プロフ) - べにさんの小説をはじめて読ませて頂きました。しょうたくんが涙を流す場面がとても心に打たれました！！！最後、再会ですかね！よければおまけ的なのをかいてほしいです^ ^ (2018年2月15日 8時) (レス) id: d4fbe2e5a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年2月14日 0時
