奇跡のひとたち ページ23
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現実世界だというのに、まるで再生ボタンを押したみたいだ。
遠ざかっていた音や景色が戻ってくると、わたしは学校の中庭の、降り積もった雪の上に座りこんでいた。
四階から落ちたはずの身体には、傷ひとつない。
手のなかには、割れたはずの壜が元の形のまま。
空っぽのそれを手に、足元の、小高い灰の山をぼうぜんと見つめた。
頬を伝う涙が、枯れるようすはなかった。
「A！」
亮が校舎から駆けてくる。
慌てたように、うれしそうに、その巨大な感情を抑えていられないとでもいうように。
「Aっ！A！」
周囲の視線をこれでもかと集めるなか、座りこむわたしに勢いよく飛びついてきた亮は。
「すばるくんが・・・
すばるくんが目ぇ覚ましたって！！」
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「はい、ハッピーバレンタイン」
テーブルの上にふたつの箱を置く。
デパ地下の、某有名チョコレート店の包装紙。
対面に座るふたりの男はそれを見て、あまりうれしくなさそうに顔をしかめた。
「オマエさぁ、大事な大事な幼馴染相手に、毎年買うてきたもん丸投げって・・・」
「すばるくん諦めよ、いい加減Aに女子力求めても無駄やて」
「文句あるなら返してもらって構わないけど？」
手作りにこだわる必要なんてないし。
ていうか、専門店のチョコのほうが美味しいに決まってるし。
言い返すと、これみよがしにため息をついてみせたすばるは、
「男心わかってないわ〜」
なんてぼやきつつ、さっそくひとくち。
箱のなかにはショーウィンドウで見た通りの、宝石のようなチョコが詰められ、カフェの黄色味を帯びた灯りにきらきら輝く。
「嫁にすんのはもうちょい先やな」
「なんでわたしがすばるの嫁になる前提なのよ」
「せやで！俺がもらう可能性もあるんやから」
「亮は黙っててね」
「・・・ハイ」
___________________あれから、
世界にはいくつもの年月が流れた。
すばるは二年遅れで高校を卒業し、その後大学にも行って、今は立派に社会人をやっている。
どうやら運命ってものはほんとうに根強くつながっているらしく、わたしと彼は、現在おなじ職場で働いているのだ。偶然に。
亮はすこし前までは軽く芸能人のようなことをしていたが、今はもっぱら音楽関係の仕事に夢中で、忙しい日々を送っている。
この歳になっても３人でいられること。
それは、奇跡に等しいことなのだ。
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眞光弓眸 - バレンタインらしい、とってもいい小説でした！ (2018年3月14日 21時) (
レス) id: f707b6af10 (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - 安紀子さん» 安紀子さん、はじめまして！こちらこそ、読んでいただいてありがとうございました！何かすこしでも届けられたものがあったなら幸いです！(^^) (2018年2月15日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - 安田ヨココさん» 安田ヨココさん、はじめまして！読んでくださってありがとうございます！そんなふうに言っていただけてうれしいです！おまけ、書き上がったら更新しますね(^^) (2018年2月15日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
安紀子(プロフ) - 初めまして(^^) 素敵な作品をありがとうございました。読み終えて、何だか暖かい気持ちになりました(*´ω｀*) (2018年2月15日 14時) (レス) id: 5200fb55a9 (このIDを非表示/違反報告)
安田ヨココ(プロフ) - べにさんの小説をはじめて読ませて頂きました。しょうたくんが涙を流す場面がとても心に打たれました！！！最後、再会ですかね！よければおまけ的なのをかいてほしいです^ ^ (2018年2月15日 8時) (レス) id: d4fbe2e5a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年2月14日 0時
