血の契約 ページ13
「あ…」
言葉が出なかった。助けてくれた吸血鬼の正体がお客さんだったことも驚いたし、なんとも…こんなにも美しい顔立ちをした人がいるのかと思った。白い肌に映える赤い瞳と、少し開いた口から見える他の歯より長い八重歯。
男性はぼおっと見つめてくる私を見てクスッと笑い
「もう信じてくれた?」
首を傾げてニコッとしながら話す彼を見ると、妙に心臓が跳ね上がった。
「は、はい…」
どうしてだろう。私は急に恥ずかしくなり、顔を隠した。
すると男性は私の方へ近づいたのか、彼の冷たい吐息が頬にあたった。
「いい匂いがするね…」
そう言いながら髪の毛に触れられ、私は思わずビクッと反応した。
「ちょっと、え?待って…」
顔を上げると男性はそれを待っていたかのように私の顔を手で固定し、だんだん顔を近づけてきた。
私は恐怖で動けず、覚悟を決め目を瞑った。助けてくれたんだ。血を吸われるぐらい…
痛みがくると思った。だが彼は私の怪我をした頬を、チュっと音をたて優しく口づけした。
「え…?」
身体中が熱くなった。それからも何度も傷口の血を舐め続け、急にハッと我に戻ったのか
「あ…ご、ごめんなさい。どうしよう…」
焦ったように頭を抱える男性。私は展開が早すぎてわけが分からなかった。
「だ、大丈夫です。」
「大丈夫じゃない。俺は…人の血を…」
え?
「俺は人の血を飲んだことがなかった。理由は…吸血鬼が初めて吸った人間は死ぬまでその吸血鬼に血を与えなければならない。俺はなんてことを…」
すぐにはわけが分からなかったが、ゆっくり噛み砕いていくと、私は事の重要性に気づいた。
ドクンと心臓が跳ね上がり、血の気が引くのを感じた。
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作者名:Starlight_BEAAAN | 作成日時:2016年4月26日 16時