27.察しが悪いバカ…side N ページ27
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智「味噌汁の匂いする。新しい女できた？」
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楽屋に入るなり、俺の隣に座って来た色黒男さんはくんくんと犬のように匂いを嗅いでは
まるっこい目で見つめて来て、ニッコリそう言った。
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和也「犬か、あんたは」
智「しかもまあまあ美味そう。え、女のタイプ変えたの？」
和也「女のタイプってなによ(笑)」
智「ニノの女のタイプってさ、顔面偏差値が高いか、胸が大きいかじゃん？」
和也「んな人をクズみたいに」
智「料理できるを第一条件にしないでしょ。どうしたの、タイプ変わったの？」
和也「俺が自炊したって考えはないの」
智「ない」
和也「オイ(笑)」
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新しい女じゃない。ーーーー…女ではあるけど。
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どうやら楽屋入りしたのは俺が二番目だったらしく、助け舟である他の三人がまだ来てない。
メンドクセェ、って心の中で舌打ちして
この勘がやたらと鋭い人をどう巻こうか考える。
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料理ができたのは意外だった。
まあしがない不倫に陥る女で、あんなマンションに住むぐらいだろうから毎日外食だと思ってたのに
Aは意外に家庭的。
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和也「お母さまがね、大事な息子のお家に来てるんですよ、昨夜から」
智「そうなの」
和也「だから味噌汁の匂いしたんじゃないんすか。朝ごはん、久しぶりにちゃんとしたの食べたんで」
智「ふうん…」
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大野さんはあまり腑に落ちない顔をしてたけど、スルー。
彼も彼でこれ以上探っても何も出てこないと思ったのか、スマホを取り出して釣りのゲームなんかを始めた。
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そっと俺もスマホを取り出して、ラインを開く。
それから固定しておいた『にのみやちゃん』をタップすれば
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【合鍵、ポストに分かりにくいように入れた】
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っていうメッセージとよくわからない、うさぎまるの相方の目が笑ってないクマのスタンプが送られて来ていて。
俺の眉間にはたちまちシワが寄る。
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和也「…持っとけって意味だったんだけどな」
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ぼそり、と呟いて【了解】とだけ返信するとすぐにはつかない既読。
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彼女は思ったより、察しが悪い。
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