17.張り詰められた嘘を溶かしてくれるのは、あなた。 ページ17
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「ごめん、また」
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とにかくこの空気感を切り裂きたくて
とにかくこんな息もできない部屋にいたくなくて
とにかくこんな嘘で塗り固められた関係を壊したくて
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私は誠くんの顔さえも見ずに、それだけ投げ捨てて会議室を飛び出した。
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急に仕事が入ったって何よ。
楽しそうに麻里さんと出かけていたくせに。
つくんならもっとまともな嘘をついてよ。
嘘をつくんなら、上手く最後まで隠し通してよ。
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かつかつ、と嫌味なぐらいヒールで床を踏み倒して
このまま帰ろうとエレベーターがある方向へとただただ突き進んでいこうとしたら。
…したら。
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急に応接室から飛び出した、白い手にグイッと引っ張られ
「ひ！？」と変な声を出していると
不意に背後でバタン、と扉が閉まる音がして何事かと反射的に瞑ってしまった目を開ければ
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和也「ハジメマシテ？(笑)」
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くは、と笑う二宮和也が、いた。
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「…っなっ、」
和也「いっやぁ、驚いた。ゲーム会社のCM引き受けてよくよく資料見たら小野誠って書いてんだもん俺の担当」
「…」
和也「そしたらなんかにのみやちゃんもいるしね。世間って狭いね？」
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ケラケラ笑うこの人は、いつもと違う。いつもエレベーターで会うこの人は本当にだらしないぐらいのテロンテロンTシャツなのに
今はONだからバッチリ決めてる髪型に、カッコいい服装。私がテレビでよく見る、アイドルの二宮和也だ。
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ぐぐ、と肋骨あたりが重くなる。
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和也「…あれが、にのみやちゃんの飼い主でしょ？」
「うめみやです」
和也「にのみやちゃんを弄ぶぐらいだからどんなイケメンかと思ったら全然じゃん。一億倍俺の方がカッコいいね」
「…うめみや、です」
和也「…あの男になんか言われた？」
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営業用に存在しない、低く優しいこの人の声はなかなか錯覚要素を含んでいる。
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「…別に何も。これからまた仕事あるんで」
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じゃあ、って握られた手を振りほどいて彼に背中を向けて部屋を出る瞬間。
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和也「俺が絶対、Aちゃんのこと助けてあげるからね」
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彼はどうやら、私の心を揺さぶるのが得意らしい。
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