166.好きだった。 ページ7
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話をしている間に、美味しそうな料理が運ばれて来たけれど
私は淀みなく、自分の過去を曝け出した。
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歩みもらってもらうためには、まずは自分が相手に歩み寄らなきゃいけない。
私が赤裸々に話していると、樋口さんの表情は徐々に晴れて来て
その代わり誠くんの顔色が、バカみたいに悪くなっていった。
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カズとエレベーターで遭遇したこと。
助けてやる、と言われたこと。
パーティーに行ったこと。
誠くんからマンションを買い取ってくれたこと。
誠くんをやっつけてくれたこと。
優しい笑顔を見せてくれたこと。
真優さんのことは、ちゃんと想っていたこと。
真優さんの代わりに私を助けたこと…。
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自分で話している間、やけに胸が温かくなるな、と思ったらそれはカズを思っているからだった。
人を想う気持ちは、こんなにあったかい。
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人を好きになるということは、こんなにも愛しく、苦しく、痛々しい。
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「私はずるい人にはなりたくないんです」
真優「…ずるい人？」
「樋口さんの気持ちを見て見ぬ振りをして、カズのそばにいたって罪悪感の塊でしかない」
真優「…」
「罪悪感を抱えて生きていくのは、あまりにも辛すぎる。そんな自分は好きになれません」
真優「……」
「そんな自分のことを、カズはきっと好きになってくれない」
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カズの笑顔が思い浮かぶ。
私の頭を撫でてくれた、あの温かい手のひらが。あのタバコ臭い匂いが
私を強くする。
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「だから」
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「もう、私に関わらないで。小野さん」
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小野さん、と呼んだのは明らかな抵抗だった。
ぴく、と彼の左眉が微かに動く。
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「あの頃。私は確かにあなたが好きでした。胸が焦がれてしまうほど、周りが見えなくなってしまうほど」
誠「…」
「弱かったし、青かった。あなたに捨てられるのが怖かった。依存とも言えたと思う」
誠「……」
「それでも、あなたとデートする時はすごく嬉しかったし、…嬉しかったし」
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息がつまる。
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本当に好きだった。 誠くんが笑うとすごく嬉しかった。
カズみたいに責め立てられないのは
きっと
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あなたが、
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167.移りゆく世界の中でも、あなたがいい。→←165.あたかもそれが当然のように
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