179.ペンネーム ページ20
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目の前で電車が通り過ぎる。
強い風が吹いて、私の髪の毛をゆらゆらと揺らす。
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“えー、最近僕は小説にハマっています。その中でも恋愛小説で、うめちゃんって呼ばれる子が主人公です、と”
“その子の相手が二宮くんにそっくりで、毎回読み進める度にドキドキしてしまいます”
“最近の展開では、うめちゃんと相手役の男が離れ離れになってしまうのですが、二宮くんだったらうめちゃんをどこに呼び戻しますか？”
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開いた口がふさがらない。
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“…というね。お便りなんですけども。えー、俺だったら？離れ離れになっちゃったうめちゃんをどこに呼び戻すか？”
“俺だったらね、家。そう、俺の家。うめちゃんも知ってる、俺の家。”
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そう聞こえた瞬間
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ーーーー…私は、走り出していた。
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“俺の家で待ってる。待ってるよ”
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ヒールなんて構わず、駅を飛び出して
東京の夜の街を必死に駆け抜ける。
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“てかうめちゃん、って可愛いね。可愛くない？俺めっちゃ好き。”
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曲がり角を曲がって、ウロウロと辺りを見渡しながら22時の街を駆け抜ける。
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“まあね、このようにねオープニングで僕が叫ぶ一言を！募集しておりますので是非とも送ってきて頂きたいと思います”
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「……っはぁ、かず」
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“よし、選ぼ！ひこ！そいや！”
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“曲は嵐さんで「Bounce Beat」”
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ーーーー…ふざけんな。
いつも通りにしたよ。だって日曜日だもの。日曜出勤だった。
いつも通り22時の電車で寄り道して帰ろうとした。いつも通りイヤホンを耳に挿して、あなたのラジオを聴こうとした。
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いつも通り、あなたの声に恋をしようとした、22時。
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あまりにもおかしいオープニングの一言。ペンネーム。
馴染みのある呼び方。馴染みのあるものがたり。
あれは勘違いなんかじゃない。
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カズ自身が、ラジオに送ったメールだ。
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「……っ」
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寄り道をして、電車に乗ろうとしたけれどやめる。
私は東京の街のど真ん中を
必死で走って、…走った。
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180.東京の街のど真ん中→←178.NOW ON AIR！！！
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