178.NOW ON AIR！！！ ページ19
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せっかくだからゆっくり食べよう、頑張ったからデザートもつけちゃおうと贅沢をして。
お会計をしようとカバンの中に手を突っ込むと、指先に触れた何か。
そっ…とそれを掴んで見てみれば。
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「……あ。」
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ーーーー…和也『いいんじゃない』
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カズがくれた、黄色い押し花のイヤリング。
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ネイビーのドレスたちと捨てようとした。でも捨てられるわけがなかった。
嗚咽を吐きながら、イヤリングを近くにあったカバンに入れたまんまだった。
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「…かわいい」
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そっ…と微かに震える指先でガラス玉を撫でて、口元がふんわりと上がるのがわかる。
せっかくだからと耳元に飾り付けてみて、すぐ隣の窓をみれば泣きそうな顔をしてる私を
「大丈夫だよ」と慰めてくれるように、そのイヤリングはキラキラと輝いていた。
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こんな時だけ。こんな風に。
ズルイよ。
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ぐっ、と泣くのを我慢してお会計を済ませる。
外に出ると思ったより温かくて、生温い夜風が私を貫く。
それは春の終わり、夏の始まりを思わせる。
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かつん。ヒールを鳴らして駅の方へ。
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「……なんもないじゃん」
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いつも通りに過ごしてくれ、って言われていつも通りに過ごしてきた。
だけどそれは至って普通の、なんの変哲も無いいつも通り、でしかなく。
何かハプニングが起こるわけでもなく。
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「なによ…」
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ピ。と改札を出て、ホームへ向かう。
2分後に電車がやってくることを確認して、いつも通りスマホを取り出してイヤホンを耳に挿す。
反対側のホームに電車がやって来る。
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いつも通りの生活。いつも通りの景色。
いつも通りの私。
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ピ。ピ。ピー。
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“二宮くんがうめちゃんって呼んでるよ！”
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「………は？」
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“はい。こんばんはー、嵐のカズナリニノミヤです。今日のオープニングの一言は”
“ラジオネーム、二宮くんがうめちゃんって呼びたくて会いたくて仕方ないさんから頂きました”
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頭が、追いつかない。
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