微熱37℃ Part7【K.N】 (ページ11)

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170.俺は、あげられない。ページ11

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和也『何の用』

真優『謝りたくて』

和也『謝る？』

真優『あの頃、和くんは仕事のために私と別れたって言ってたけど。本当は私のためでもあったでしょ』

和也『……』

真優『海外に行って数年経って、もしかしてって思ったの』

和也『…気づくのオセェよ(笑)』

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煙草の匂いが和くんからして、あ、煙草。吸い始めたんだって思ったこと、覚えてます。

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真優『変わったね』

和也『そ？そらどうも』

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すっかり変わってしまった和くんが、寂しかった。決して私のことを見てくれなくなった和くんが

別人みたいでちょっとだけ、ピリ、と棘が刺さった。

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真優『…あの子。特別なんでしょ？』

和也『あの子？』

真優『一緒にいた、名前を呼んであげてた子』

和也『あぁ……』

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和くんが、目を優しく細めたんです。

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真優『付き合ってるの？』

和也『いや？付き合ってない』

真優『え…。付き合ってないのに部屋に入れてるの？』

和也『まあね、色々あるのよ。』

真優『なんで付き合わないの？』

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私がそう尋ねれば

和くんは窓の外を見て、微笑んで。

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和也『俺は普通をあげられない』

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そう、言ったんです。

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「…普通？」

真優「はい。普通。」

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真優『…どういうこと？』

和也『外みてみ。』

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言われるままに外を見ると、そこには至って平凡な見慣れた景色で。

私は彼が何を言いたいのか分からなくて。

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和也『俺は、Aに普通をあげられない。』

真優『…？』

和也『普通に外で手を繋ぐ。普通に遊園地でデートする。普通の格好で普通に街を歩く。』

真優『……』

和也『俺は、Aに制限しかさせられない。街を歩いてる人たちが普通にできていることを俺は普通に出来ない』

真優『……和くん』

和也『ましてやAは今まで傷ついてきた。もう十分だよ、アイツが傷つくのは。』

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和也『Aには、普通の人と、普通に幸せになって欲しい』

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和くんがここまでいう相手。私はこれで安心して振り切れる。そう思った矢先だったんです。

小野さんが、私の目の前に現れたのは。

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