161.それはまるで流れる川のように ページ2
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日々は至っていつも通り、何の変化もなく過ぎていった。
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それはまるで、雲が空に浮かぶように
川に水が流れるように
道端に花が小さく咲くように
とても小さく、当たり前のような。
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佐藤「あれ、梅宮さん髪切りました？」
「おはよう、佐藤くん。うん、よく気づいたね」
佐藤「そりゃあ結構一緒にいますからね。半年前ぐらいですか？そんぐらいの長さになりましたね」
「うん。ちょっとね」
佐藤「最近明るくなりましたよね」
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ピ。と私も佐藤くんも社員証をかざして、エレベーターに向かう。
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「え？」
佐藤「ここ最近ずっと死んでたじゃないですか。顔」
「え」
佐藤「課のみんな梅宮さん大丈夫か、なんかあったのかって心配してたんですよ。でもそこまでグイグイ行けないし」
「ホント……」
佐藤「でも。嵐さんに会ったあの日ぐらいですか？もう数週間前ですけど。そんぐらいから明るくなったなー、って」
「……」
佐藤「あ！もしかして嵐さん好きで、あんな近くで見れたから元気なんですか〜！？」
「違う違う(笑)」
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ちょっとふざけた様子でそう言ってきた佐藤くんに、ナイナイ！って手を振れば「わかってますよ」って笑ってくれた。
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髪。
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佐藤「まじで。日曜出勤とかダルいですよねぇ…。まあ、午前で帰れるのはいいんですけど」
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伸びたね。
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「まあね」
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…うめ。
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佐藤「彼氏さんとデートとかドタキャンして喧嘩になりませんでした？」
「いないよ」
佐藤「なんだぁ」
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ちぇっ、って唇を尖らせる佐藤くんを笑いながら見ているとエレベーターはオフィスがある階に。
ヒールを鳴らして、今日も頑張って働く。
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単純な女だ。
カズにあの日、去り際に零された言の葉を。私はひと時も離したことはない。
ずっと、胸に抱きしめて。
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もう街中の看板のカズを見ても胸は痛まない。
テレビの中のカズを見ても心は傷つかない。
日々の中にカズが溢れてしまっていても、私はそれを全力で抱きしめる。
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それはもう、振り切ったとか。忘れた、とか。
そういう類じゃなくて
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ただ、自分に素直になったからだ。
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