微熱37℃ Part6 【K.N】 (ページ10)

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145.あなたの切れ端はもういらないページ10

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カズがいない世界は、思ったより冷たかった。

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香奈「生きてますか？」

「……」

香奈「生きてないですね」

「……」

香奈「あー！もう！何があったの！全部話せ！」

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カズと本当に契約を切った私を待っていたものは、大きすぎる虚無感と空虚感。

一人に耐えられなくて、ずっと部屋で引きこもっているとまるでそんな私のことを察知したかのように

香奈からLINEがやってきて。「暇？暇なら会わん？」って誘いに私は乗った。

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ーーー…カズと契約を解消した夜。

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『…連絡先、消した。』

和也『オッケー。俺はさっき消したから』

『うん』

和也『A？』

『うん？』

和也『誠みたいな男にもう捕まっちゃダメだからね』

『うん…(笑)』

和也『もう俺は助けてあげられないからね』

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そう言って笑うカズを見て、あぁ本当に終わりなんだって思った。

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すっかり冷めてしまったハンバーグにラップをかけて、冷蔵庫に仕舞う。

すっかり泡がなくなったビールはもったいないけれど捨ててしまった。

流れていくビールを眺めて、渇いた喉は潤うはずがなかった。

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カズは玄関まで見送りに来てくれた。

靴を履いて、キーケースからあらかじめ外しておいた合鍵をカズの手のひらにちょこんと載せて

ふわり、と微笑まれたその笑顔を目の裏の裏にまで焼き付けようと必死だった。

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『じゃ…あね』

和也『うん』

『ちゃんと食べるんだよ』

和也『母ちゃんか(笑)』

『じゃあ…、また』

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不思議と涙は出なかった。

はは、とお互い笑顔にならない笑顔のようなものを振りまいて

きゅ、と最後に指を掴んでバイバイと手を振って

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カズの部屋から、私を消した。

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不思議と自分の部屋に戻ると、涙が溢れて来た。

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同じ間取りの部屋のくせに、さっきの部屋とはまるで違って嫌でもカズを思い出してしまうことに気づいた。

カズは私に切れ端ばっかり渡して来た。

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『……』

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いつかのパーティーのネイビーのドレス。

ネックレス。ヒール。

黄色い押し花のイヤリング。

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捨てようと思った。

でも捨てられやしなかった。

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