158.Why? ページ23
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一度として目は、合わなかった。
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＊「嵐さん入られまーす！」
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CM撮影。私は監督の後ろに佐藤くんと並んで撮影の様子をずっと見ていた。
…泣き腫らした目を、隠しながら。
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ーーーー…さっき。カズが私の目の前に現れた時。一度として私の名前を呼ばず
そして一度として目は合わなかった。
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佐藤「すごいですね！オーラが違いますよね」
「…そうだね」
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カメラのレンズを向けられているカズは、さっきとはまるで別人で。
くるくる変わる表情。それは他のメンバーさんにも言えることで
その様子は彼らがプロだということを言わずもがな、表していた。
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照明が明るくなる。
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ーーーー…ねえ、なんで。
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なんであのとき。
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和也『アンタが泣かせたかって聞いてんだよ！！』
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私のために、怒ってくれたの？
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ギリ…と右手が左の二の腕を掴む。
ぼんやりと目の前が掠れていく。
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目の前では相変わらず、五人が監督さんたちとあーだこーだと話していて撮影はスムーズに進んでいく。
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いつだってそうだ。私はタイミングが悪い。
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忘れかけていた煙草の匂いが、鼻を掠めた瞬間、もう戻れないと思った。
あの声を聞いたとき、驚くほど心が痛くなった。
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なんで好きなんだろう。なんで嫌いになれないんだろう。なんで忘れられないんだろう。なんで夢に見るんだろう。
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あなたはいつの間に、私の生活の一部になっていたの？
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なんで好きなのに離れなきゃいけないんだろう。こんな痛い思いするんなら
こんなに泣くぐらいだったら
「いやだ」って聞き分けいい振りなんかせずに、「離れないで」って言えばよかった。
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よかった……。
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佐藤「梅宮さん」
「……」
佐藤「梅宮さん？」
「……」
佐藤「梅宮さん！」
「っ！？う、あ、ごめん何？」
佐藤「もうしっかりしてください。撮影終わったみたいですよ」
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はっ！と意識を取り戻せば、もう五人の姿はいなくて。
ぼけっとしたまま作業を色々していたらいつのまにか数時間の時が流れていたらしい。
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