152.延長戦の痛み ページ17
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だから、すっかり忘れていた。
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＊「梅宮さん！こちら監督さんです」
「責任者の梅宮と申します。本日はよろしくお願い致します」
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緊張した趣で、ぺこりと頭を下げると怖そうな監督さんが一気にふわわーんって笑顔で「よろしくな〜」って挨拶してくれて
少しだけ吐き気が収まった。
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樋口さんと誠くんが会社に訪れた、翌日。
夜は全く眠れなくて、ベッドの上で何度も寝返りを打った。
でも寝返りを打てば打つほど、壁にかかっているネイビーのドレスが私の視界をチラつかせて胸が痛むから
ぎゅ！と目を閉じて世界が明るくなることだけを祈って、夢に潜り込んだ。
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無事、安眠できたのでそれはいいものの。
翌朝。出勤するなり「梅宮さん！撮影現場でしょ！今日！」って言われて会社を追い出され。
無理やり詰め込まれた車に乗りながら、頭が覚醒して慌ててスケジュール帳をペラペラ捲っていくと
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『5日。嵐さんCM撮影。同行』…と
確かに私の字でそう、記されていた。
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佐藤「梅宮さん、大丈夫ですか？顔色悪いですけど…」
「大丈夫大丈夫。ごめん…」
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参加してくれた後輩にまで心配される始末。自分が情けなくてまた、溜息を吐く。
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車が到着した場所は、あからさまにスタジオで現実なんだって知らされる。
嵐さんCM撮影なんて、なんでこんなタイミングで。
重たい頭を抱えながら責任者として、監督さんや色々な方にペコペコ挨拶して回っていく。
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ーーー…それから。
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佐藤「いやぁ、俺！生嵐見るの初めてなんですよ！梅宮さんは一回会ってるんですもんね？」
「…う、うんそうね…」
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正式に言えば五人中二人には何回も会ってるんだけど、と心の中で吐き捨てて
隣で芸能人に会える！とウキウキしてる佐藤くんと共に廊下を突き進む。
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責任者として本日はよろしくお願いします、と挨拶をしなければならない。
バカみたいにドキドキうるさい心臓に落ち着け、落ち着け、と強く念じてみても私の心臓はどうやら言うことを聞いてくれないらしい。
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ーーー…どうしよう。
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和也『うめちゃん』
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私は、どんな顔をしてあなたに会えばいい？
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