150.あなたが褒めてくれた、あの演技で ページ15
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ーーーー…私がカズを変えた。
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真優「…っ、とにかく！早く和くんの前から消えてください」
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そんなこと、あるはずがない。
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ぶんぶん身体を容赦なく揺さぶってくる樋口さんの大きな瞳には涙がたっぷり溜まっていて
それは少しでも触れてしまえば溢れてしまうんじゃないか。と危惧してしまうほど。
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私の頭はやけに冷静で
樋口さんに身体を揺さぶられながら、考える。
カズは変わってないし、変わりもしなかった。
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頭がバカみたいにいいところも
少しイタズラが好きなところも
犠牲を払っても私を守ってくれるところも
思ったより感情の起伏が激しいところも
何一つ、変わっていない。
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ーーーー…和也『A！』
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私の名前を呼んで、笑顔になるところも…、変わって…
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「…私は」
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ぐっ。と私の身体を揺さぶっていた両手を掴んで唇を動かした。
俯きかけていた顔をゆっくりとあげて樋口さんとしっかり目を合わせて
震えて堪らない手に力を入れて、脳裏に浮かべる。
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ーーーー…和也『大丈夫。上出来だよ、A』
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あなたが褒めてくれた、あの言葉を。
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「私は、もうカズとは関係を持っていません」
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世界がひっくり返る、音がした。
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真優「……え」
「樋口さんとの件。…申し訳ありません、カズから聞かせて頂きました」
真優「……」
「私も、樋口さんとまるで同じだったんです」
真優「……うそ」
「本当です。カズはあなたを助けられなかった自分を悔やんで同じ待遇である私を助けてくれたんです」
真優「……」
「最初から私と彼はそういう関係じゃないんです。だから樋口さんが危惧するようなことはありません」
真優「……」
「もう、私には関係ないことなので。…お仕事はきっちりよろしくお願い致します。失礼致します。」
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ニッコリ微笑んで、樋口さんのすっかり弱まった腕をするり…と自分の身体から外して
呆気に取られている誠くんを思い切り睨みつけて、部屋を出る。
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パタパタとしばらく歩いた後
曲がり角を曲がってすぐ
私はその場にしゃがみ込んでしまった。
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