こんにちは打開策3 ページ6
対面したその人はただゆったりとソファーに深く腰掛け足を組んでいるだけなのに、威圧感で体が震えそうになる。かの身に纏う色は極上の朱金。周囲に控えるのは負けず劣らずの珠玉の数々。
とりあえず頭に浮かんだのは───お金、足りないのでは?という、実に庶民的な感想だった。
オークショニアに背中を押されて連れていかれた部屋の奥には、「囚われの身」とはかけ離れた人物達がくつろいでいた。手錠や足枷も無しに堂々と談笑する彼等は、私を視界に認めるとすっとその空気を変えて一斉にこちらを見つめる。
見える限りでは全員男性で、健康状態も良好そうで、あまり不躾に見るのははばかられるが顔がすさまじくよろしい。すさまじく、よろしい。
やはり、これは何か裏がある。
じっとりとした目でオークショニアを睨むと、先程までと変わらない笑顔でコミカルに肩を竦めた。詳細は「商品」本人達に聞けということらしい。震える息を吐き出して向き直る。話をしてくれそうなのは……恐らく。探すまでもなく、あの人物だ。
散らばった人達の中心、いっとう重々しいオーラを纏う金髪の男性。ぱちりと合った視線に、彼は余裕の表情で微笑んだ。
ひとまず、合格。
誰が放ったか分からないからかいの言葉。
試されているのだろう、わたしが、彼らの身柄を預かるに足る人物かどうか。
目の前まで進んで、頼りない足を踏ん張って立つ。
「……あなたが、リーダーとお見受けします。わたしの名はAA。A家の頭首であります。あなた方が、納得したならば…身柄を当家が保証させていただくことになります。」
僅かに震えた声は静寂に消えた。ルビーのごとく美しい双眸は私から1ミリたりとも逸らされないまま、室内には重い緊張が満ちていく。絡みつくプレッシャーで、うまく、息ができない。
どれくらい時間がかかっただろうか、金糸に縁どられた目がふ、と細められた。
「……試すような真似をしてすまなかった。“我々”としても、買われる相手は選びたいものでね。」
深く低く、そしてほんの少し笑って響く声。一気に緩んだ空気に、膝を着いてしまいそうになる。そんな安心しかけたわたしの耳に飛び込んできた自己紹介は、想像を遥かに超えた衝撃を新たに与えることとなる。
「では、自己紹介でもしようかね?はじめましてフロイライン、私がグルッペン───グルッペン・フューラーだ。」
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反復横跳び(プロフ) - 倉の中の石さん» ふとこぼれる猟奇的な一面みたいなところにものすごく性癖を感じてしまうオタクなので……へへ……頑張って更新再開いたします…… (2020年1月24日 23時) (レス) id: 96c6da8254 (このIDを非表示/違反報告)
反復横跳び(プロフ) - 薬味亭シャブ子さん» シャっシャブ子さんだ〜〜!、!!??!?返信遅れてすみません、なんとか更新再開していきたいと思います!がんばります! (2020年1月24日 23時) (レス) id: 96c6da8254 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石(プロフ) - めっちゃ面白いです!もうゾムさんのところで「はぁーっ」ってなりました。神ですね。更新頑張ってください (2019年11月3日 15時) (レス) id: b9ac23ea5c (このIDを非表示/違反報告)
薬味亭シャブ子(プロフ) - コメント失礼します!!数あるオークションパロの中で一番すきです、描写がすごく丁寧で好きです。無理せずにこれからも頑張ってください、更新をいつまでも心待ちにしております (2019年11月3日 11時) (レス) id: b94aa3e9a3 (このIDを非表示/違反報告)
反復横跳び(プロフ) - みしろさん» ありがとうございます!冷え込みにやられて熱を出したりしていました!体には気をつけながらのんびり更新していきます! (2019年11月3日 1時) (レス) id: 96c6da8254 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:反復横跳び | 作成日時:2019年10月20日 14時