208 ページ41
「ちょっと着替えてくるから待ってろ」
散々くすぐられて笑い声もやめての一言も言えなくて息絶え絶えに。
栞を挟んだその先を読み進めていると手元が暗くなった。
「お前が今1番謎に思っていることは何だ？」
顔を上げれば今読んでいる小説に出てきそうな探偵の姿が。
〔何故海は青いんですか？〕
「……え？」
まさかこういう質問が来るとは思わなかったのだろう。目が点になっている。
「それは空の色が反射してるからだ」
〔雨の日は曇って青なんて見えないのに同じ事が言えるのですか？〕
「じ、次回までに考えておく」
さてその次回はいつ来ることやら。
「俺にも謎に思っていることがある」
〔どんな謎ですか？〕
「昨日のあの場所で何故俺を避けた？」
僕はふいっと目を逸らした。
言えるわけないだろう。もう心を決めたの。
『貴 方 に は 一 生 か か っ て も 言 え な い よ』
「口だけ動かしても分からないぞ。紙に書いてくれ」
貴方が先に死んでも。献花を持って墓の前で手を合わせたとしても。
この口から出すことはないだろう。
事実を聞いたら貴方までいなくなってしまいそうな気がするんだ。
貴方まで僕を置いていったら、僕は誰を手本にして、目標にして生きていったらいい？
だから真実を話したくないの。
「そんなに思い悩んでるなら無理に話さなくていい。俺が悪かった。誰でも話したくないことぐらいあるよな」
ニカッと歯を見せて笑うその姿に罪悪感を覚えて心が痛くなる。
隣に腰を落ち着けるその仕草に距離を取りたくなる。
本にぽたぽたと雫が落ちる。膝を抱えて座り直す。
「でもまぁ、いつかは話してくれよな！俺に関係があってもなくてもお前の心を締め付けるその悪い塊だけは知っておきたいから」
その塊は誰のせいで生み出されたのかとか、考える気も失せた。
そのいつかは絶対に来ない。
もう決めたんだ。吹っ切れたんだ。
貴方に話すことは何もない。僕の心に閉じ込めて鍵をかける。
「ナワーブ！！試合―！！」
ほら、行ってきたら？
「悪い。パッと終わらせてすぐに戻る」
〔死なないで下さいね〕
「ん、善処する」
帽子を被り直して遠ざかるその姿は目で追わない。
僕のこんな姿見て死なないでなんて、心を抉り取って行ったのは誰だって話だ。
この服、帰ってきたら返そう。
僕には自分の服があるんだから。
『もう嫌だ、なぁ』
自分の耳にも届かぬその言葉は誰も傷つけたりなどしない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白狐-bilyakko-(プロフ) - リパ推しの雪さん» ありがとうございます！(*´`)更新頑張ります！！ (2021年3月1日 9時) (
レス) id: 6701540cff (このIDを非表示/違反報告)
リパ推しの雪 - すごい素敵な作品ですね！更新頑張ってください！応援してます！ (2021年3月1日 5時) (レス) id: e92c1b8c9b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白狐ーbilyakkoー | 作成日時：2021年2月27日 1時
