204 ページ37
「準備出来たか？開けるぞ」
朝起きて目やにの多い目元を水で洗い流し、布団の上に〔着ておけ〕というメモと一緒に置かれていた服に身を包む。
この服何処かで見たことあるような……？
首を傾げていれば背後のドアがガチャッと音を立てて開いた。
「お、似合ってんじゃんか。ラルの服は修復に3日かかるってよ。だからそれ着とけっていうのと……あとはこれ巻いてこれ被ったら完成だ」
ぼーっとする僕の腕に手早く黒い包帯を巻いていく。
そして深緑色の羽織りを頭から被せてくれた。
部屋の中にある全身を映す鏡に抱き抱えられながら連れて行かれれば、自分と彼の姿はとてもそっくりで。
「身長もほぼ同じだし、こうやって深く被ればどっちがどっちか分からねぇな！」
〔お揃い？〕
「ま、まぁそんなところだな」
〔このまま行くつもりですか〕
「足動かせないだろ？全部治るまでは俺がお前の手足になってやるからな」
恥ずかしいと紙に書く暇も無く、そのまま彼の部屋を出る。
「今日の朝ごはんは何だろうな？喉を痛めない物だったら良いよな」
声の出ない僕は辛うじて動く左手で拙い文字を書いて彼に伝えるのだが、なんせ慣れない手だ。
スピードは遅いわ書くスペースが足りなくなるわで言いたいことが言えずで。
気づいたらもう食堂に着いていた。
僕は深くフードを被って顔が見えないようにそっぽを向く。
何故？こんな恥ずかしい姿と絶対に真っ赤な顔を周りに見られたくないから。
「あれ？ナワーブお前衣装バグでも起こったのか？」
「まぁな。俺から分裂した物だけど飯は食わせねぇとなって思ってよ。あまりそいつに触らないでやってくれ」
「んー、大変だな……。まぁお前も頑張れよ！」
エリスさんが僕の肩をポンっと叩いて厨房へ向かう。
今ここにどれくらいの人がいるのかは分からないが、賑やかなことから結構な数がいるのだろう。
今は兄以外の誰にも話しかけられたくないなぁ。
「アナタその衣装着てるの珍しいデスね」
嘘だ……。
調子が戻ったら纏めて対応するので…じゃなくて誰か助けて下さい。
うわガン見……。絶対バレてるこれ。
「あんま虐めてやるなよ」
「虐めてないですヨ」
「その衣装で言われると腹立つ。隠密、飯だぞ」
左に座る彼に自然と身を寄せる。
ほっと一安心、つく間も無く眼前に差し出される銀のスプーン。
僕に新たな試練が降りかかってきた。
__________________________
ラルが着てるのは【隠密の緑】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白狐-bilyakko-(プロフ) - リパ推しの雪さん» ありがとうございます！(*´`)更新頑張ります！！ (2021年3月1日 9時) (
レス) id: 6701540cff (このIDを非表示/違反報告)
リパ推しの雪 - すごい素敵な作品ですね！更新頑張ってください！応援してます！ (2021年3月1日 5時) (レス) id: e92c1b8c9b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白狐ーbilyakkoー | 作成日時：2021年2月27日 1時
