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ちくり
ぎゅ、すうっ、つっ、つ

ゔっ、あ、いたい、痛い!


「ラル、ちょっと大人しくしてるんだぞ。今先生がお前の傷を縫ってっから」

「安静にね。あと右太腿だけだから」


さっきのは肉を刺す針と通り抜けていく糸の感触だったのか。
そんなことより今僕は何をしてる?


「落ち着き次第私の方から貴方にカウンセリングをしたいと思ってるからよろしくね」

「なぁ先生。ラルの声が出ねーんだけど何か考えられる原因ってあるか?」

「どうしてそれを早く言わないのもう!
……そうね、喉に大きな損傷もしくはストレス辺りが考えられるわ」


声が、出ないの?そうだったっけ。
そんなわけあるか。

だけど普通に声を出そうとして漏れるのは、ッヒュー…という呼吸のみ。
首を絞められた時に出るような音。

や、なんで。なんで出ないの。出させてよ!
僕は貴方に伝えたい事が……!!




《貴方馬鹿なんですか?さっきまで散々避け続けてやっとアレを記憶から消し去る事が出来たというのに。今度こそ消しましょう!残りの力で獲物を仕留めてごらんなさい?》





そうだ。僕は貴方から逃げた。
でも気を失う前に貴方に出会った。そう、忘れたと思った。消せたって思ったのに貴方は僕の前に現れた!

憎悪の心あれど何故牙を向けられない?


「ラル」


やめて。僕に話しかけないで。

だんだんと力の戻ってきた腕を持ち上げて顔を隠した。


「糸が外れるわ。腕を戻しなさい」


右手を彼の首に伸ばす。
あともうちょっとというところでパシッと取られる。


「悪夢でも見たのか?大丈夫だ、俺がそばにいるから。声が早く出るようになるといいな」


は な し て。 お ね が い。


「先生と一緒に流れ星に願ってやる。叶う確率が2倍になってお前んとこ帰ってくるぞ」

「呑気ね……。さ、終わったわ」

「流石医師って感じだな」

「ありがとう。貴方も早く寝るのよ。彼女は病人なんだから」



「っへへ、諭されちまったな。今日は寝ずに部屋の前で余計な奴が来ないか見張ってるわ」
「あ、久しぶりにお前が好きな歌を歌ってやろうか?……懐かしいな」


力が抜けてぱたりと落ちる。

そんな余計な口叩いてる暇があったらッ……


僕は左手で胸元の布を引き寄せる。
残された力でやれる事といったら、その胸板に頭を擦り付けることしか出来なくて。

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白狐-bilyakko-(プロフ) - リパ推しの雪さん» ありがとうございます!(*´`)更新頑張ります!! (2021年3月1日 9時) (レス) id: 6701540cff (このIDを非表示/違反報告)
リパ推しの雪 - すごい素敵な作品ですね!更新頑張ってください!応援してます! (2021年3月1日 5時) (レス) id: e92c1b8c9b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白狐ーbilyakkoー | 作成日時:2021年2月27日 1時

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