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初期衣装に着替えてハイスピードで階段を駆け下り、待機部屋の前に行く。
スッ…と目に映る黒い影。


「ラル」


目の前にラルがいた。が、呼びかけても聞こえないのか無視された。
俺はそばまで近づいて手首をむんずと掴んだ。


「ラル、俺の声聞こえるか。
あー、さっきの衣装は着てねぇよ」


くるりと振り返る。だが下を向いている為に表情が分からない。
覗き込もうとして更に近づけば、肩にぼすっと顔を預けてきた。
そのまま体重をかけるようにしてガクッと倒れてくる。


「しっかりしろ。大丈夫……じゃねぇな。
取り敢えず俺の部屋来い。歩けるか?」


捻挫でもしたのかよたよたと歩いてくるその姿に良心が痛んだので抱き上げた。
いつもなら何か言ってくるんだけどな。何かおかしい。

朝見たのとは違う服を着ている。肌の露出が多いので目のやり場に困る…が、気になるのはそういうのじゃなくて傷の多さだ。

ロクに手当てもせずに行き続けたんだろう。
何がここまでラルを突き動かしたんだ?



部屋について優しくベッドに下ろす。
手も足も動かないのか、だらーんと伸ばしてピクリとも動かない。


「死んでないよな?」

『……』

「俺,医務室から医療品取ってくっから待ってろ、っわ、何だ?」


去りがけの自分の小指を引っ張られる。
見れば、こちらに顔を向けたラルが薄く目を開けて口をぱくぱくと動かしている。

俺はラルの頭のそばに腰掛けた。


「どうした?」

『 』

「ごめんな、聞き取れないからもう1度言ってもらっていいか?」

『 』

「お前もしかして……もしかしてだけど、声が出ないのか?」


そうだとでも伝えるようにゆっくりと瞬きをする。
あぁ、声が無けりゃ何も分からねぇじゃんか。


『 、 』

「読み、取って。か?読唇術ってことか」

『 、 』

「い、か……」

『 、 、 、 、 』

「……ッ、大丈夫だ。すぐに帰ってくる。もう休んでていいんだからな。安静にしてろ」





行かないで。

そう読み取れた。俺だって苦しんでる妹を放っては置けない。
だけど治療しなきゃ死ぬかもしれないんだ。
もう一緒にいれないかもしれないんだ。


頼むから俺の傍から離れないでくれ。
お前と一緒にいる時間をもっと増やしたいんだ。

お前がいなくなったら俺はどうしたらいい?

悪いほうに体を向けてその後を追いかけて行くしか方法はないのか?

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白狐-bilyakko-(プロフ) - リパ推しの雪さん» ありがとうございます!(*´`)更新頑張ります!! (2021年3月1日 9時) (レス) id: 6701540cff (このIDを非表示/違反報告)
リパ推しの雪 - すごい素敵な作品ですね!更新頑張ってください!応援してます! (2021年3月1日 5時) (レス) id: e92c1b8c9b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白狐ーbilyakkoー | 作成日時:2021年2月27日 1時

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