あの傭兵に妹がいたようで【第五人格】 (ページ32)

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イソップside

2階で話し声が聞こえた。
階段を上がろうとした時、ジョゼフさんとばったり出くわした。

彼は真顔で僕を吊し上げた。
吊されたまま意識の糸がぷつりと切れた。

ふと目が覚めれば目の前に差し出される誰かの手。
その手は先程一緒に試合に行っていたメディックさんのもの。

彼の力を借りて立ち上がる。

チェイスは良かったのかと聞けば僕の状態を心配して行わなかったらしい。
確かにタゲ変されて殴られでもしたら僕は確実に戻していた。

膝に付いた土をぱっぱっと払う。
彼に礼を言って自室に戻ろうとした所、

『あの、貴方って記憶力良い方ですか？』

そんな風に話しかけられた。

「人よりは、良い方です。な、何故急に？」

聞けば僕に強く惹かれたのだと。
前から思っていたがこの人、頭のネジ1，2本少ないのでは？

自室に戻っても特にする事は無いので仕方なく話に付き合うことにした。

死化粧される人の誕生日、自分の誕生日を覚えているかと聞かれたので、超人でない限り覚えていないと答えた。

彼は僕の腕を優しく掴んで引っ張った。

何処に行くのだろう。

何をするのだろう。

触られる事に抵抗のない僕がそこにいた。

彼はゆっくりとドアを開けた。

『今日1日、少しくらい羽目を外してみませんか』

パァンパンッと響く爆音、その正体はクラッカー。

目の前には笑顔満載のサバイバーとハンター達。

揃って皆が言う。誕生日おめでとうと。

あぁ、だから彼は遠回しに聞いたのか。

背中に伝わる暖かい手の感触。

振り向けばガスマスクを外した彼が微笑んでいた。

『alles Gute zum Geburtstag! Aesop Carl!!』

流暢なドイツ語で彼は言った。

「イソップ！こっちだ！俺等でケーキ作ったんだぜ！」

「これが出来上がるまでにいったいどれくらいの材料が無駄になった事か…」

「おいマーサ！それは言わない約束だろ！？」

「ほら皆が呼んでるよ、彼に感謝しないと。ね、イソップ君？」

こんな僕の為に…

こんな風に祝ってもらったのは実に何年ぶりか。

「「「「イソップ！/君！/さん！誕生日おめでとう！！！！」」」」

前から準備していたのだろう。

僕は心からありがとうと、作り笑顔ではない満面の笑みで皆に顔を向けられただろうか。

～Happy Birthday Aesop・Carl 5.11 2020～
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無事完結しました！
結局1週間切っちゃいましたね…

次から本編入ります！