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休憩時間中もキャッキャとはしゃぐ奴はいて、落ち着いて休めばいいのに、と俺は少し冷めた目でそいつを見ていた。
(それが後に同じグループになるヤスだとは、思ってもみなかった。)
壁にもたれるAちゃんの隣に、よっこいしょと腰を下ろして、俺は彼女に気になったことをぶつけた。
｢女の子やのに、ジャニーズ入るん？｣
A｢うん、憧れとって…｣
｢もしかして、誰かのファン？｣
俺と同じ、剛くんファンならいいな、なんて。
クラスの男子に言っても分かってもらえない熱い想いを、彼女と共有できたらいいな、と少し舞い上がっていた。
でも、俺のそんな浅い考えは、彼女の達観した言葉によって見事に打ち破られた。
A｢んー、あたしはね。
ジャニーズのお仕事がしたいねん｣
｢仕事？｣
A｢ほら、ジャニーズって、何でもできるやん？
歌も、踊りも、ドラマも、バラエティも、舞台も。
そんなにいろんなお仕事ができるの、ジャニーズだけやから｣
『せやからオーディション受けてん』と、下を向いてはにかむ表情に、大人の女性の片鱗が見える。
俺は『憧れの人に近付く為』と、それだけでこのオーディション会場にやってきた。
あわよくば、今日もしかしたら会えるかも、なんて淡い期待も持ち合わせて。
でも、会場でたったひとりの女の子は、仕事という目で先の方まで見据えている。
憧れと好奇心だけで来てしまった自分が、とんでもなく恥ずかしく思えた。
A｢忠義くんは、誰か好きな人おるん？｣
｢好きっていうか、憧れっていうか…。
V6の…森田剛くん｣
A｢あぁ、ダンス上手い人や｣
｢…うん｣
あれだけ共有したいと思っていたのに。
彼女の大人びた志望動機に心は萎れて、憧れの熱意は口から出てこない。
A｢忠義くん、一番前で踊っててんから、剛くんよりも上手くなれるよ｣
額に滲んだ汗をきらりと光らせ、満開の花のように笑う彼女を見ると、一瞬、何かが胸に刺さる感覚を覚えた。
なんとなく、根拠なんて無いし、どうしてそんなことを思ったのかも分からない。
だけどこの先、自分の遠い未来まで彼女が隣にいるんだと、何故だかはっきり確信したんだ。
振付師｢はい、再開するよー！｣
パンパンッとオッサン振付師が手を叩く音で、俺たちは各々立ち上がり、『お互い頑張ろな』と励まし合った。
A｢また一緒に踊れるとええね｣
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作者名：布由 | 作成日時：2018年1月18日 10時
