十四番隊の愛され隊長

隊長三十二 ページ36

Aside
グリムジョーの部屋を後にして、自分の宮に戻る。

『…………妻、か』

ユーハバッハ。

彼奴は私の事を愛していると言った。

心を見ても嘘偽りは無く、私に純粋な愛を持っていた。

奴の幼少期を知っている。

人は奴を美と呼んだ。






？？「何故悲しそうな顔をしている」

『…………………』

？？「おい」

『聞こえておる。耳が聞こえぬ程落ちぶれてはおらぬゆえ』

声をかけてきたのは美しい目をした男だった。

？？「なら質問に答えろ。何故悲しそうな顔をしている」

『………あれが見えぬか？』

指差す方には地獄の門が今まさに開こうとしている場面だった。

？？「あれがなんだ？」

『あれの所為で、地獄へみな行ってしまう。私が作ったあの門の所為で』

当時はまだ零番隊で、私が作ったのは地獄の門と地獄蝶。

それが霊王に認められ私は零番隊に入った。

その時はまだ死神はおらず、罪を裁くのは地獄の者達しかいない。

『私の所為でみな連れていかれる。あんなもの作らなければ』

涙が零れたのを覚えている。

それを優しい手つきで拭いてくれたあの男の事も。

？？「………だが、それで助かっている者も多いはずだ。自分を貶すな。それはお前が作った至高の逸品だろう？」

優しく抱きしめられて、名も知らない男の胸で泣いた。

『どうして？どうして私の傍にいるんだ？みな私を見て逃げるのに』

？？「…………お前のその瞳がとても綺麗だったから」








『…………はっ、今思えば戯れ言よな』

そう思っている筈なのに涙が溢れて止まらない。

？？「泣かんでや、姐はんが泣いたら僕も悲しなるから」

後ろから優しく抱きしめられて振り返ると、そこには銀がいた。

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