お祭り開催地 ♪13

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大倉が持ってた紙袋から取り出したのは、厳重にビニール袋に包まれた小さな両手鍋。

キッチンペーパーで底拭くと火にかけた。

ガラスの蓋を開けると、ほわんと部屋中に広がる出汁のいい匂い。


｢ヤスのことやからどうせ、今日一日ろくなもん食べてへんやろ｣

｢何で分かんの？｣


｢ヤスのことなんか、ヤスより分かってるわ｣
｢何年友達してると思ってんねん｣


確かに俺も、後ろ向いてる大倉がどんな顔して言うてんのか目に見えるように分かるもんな。
目元クシャクシャにして、切ったオレンジみたいな半月の口して笑ってんのやろ？


｢適当に食器使うで｣

食器棚代わりのカラーボックスから取り出したお椀に注いで持ってきてくれたのは

｢野菜スープ？｣

｢うーん。野菜スープというかポトフというか…｣

本人にもよく分からんらしいけど、お椀を両手で持ったらコンソメとかしわと野菜の美味しそうな匂いがする。


｢いただきます｣

｢はい、召し上がれ｣

口を付けると、大倉の優しさが身体の中に流れ込んできた。

｢大倉。めっちゃ美味い｣

｢ほんま？良かった。薄味過ぎへんかと心配やってん｣


｢優しーい味するわ｣

こうして改めて固形物を腹に収めてみれば、自分がどれだけ飢えていたかよく分かる。

もぐもぐゴクンて飲み込んだら、もっとちゃんと噛まなアカンて怒られて、次のひと匙はもぐもぐもぐもぐゴクンてこれ見よがしに倍噛んだ。

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