忘れもの (ページ12)

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「あの…作間くん」

作間「なんですか？」

｢ありがとう…助けてくれて｣

私がお礼を言うと
彼は吹き出すように笑った

作間「やめてくださいよ先輩、お礼なんてイイっすよ。俺なんもしてないし」

「助けてくれたよ作間くんは!
作間くんがいなかったら今ごろ私…掃除してた」

「作間くんに…ダサいとこ見られちゃったな…」

私は力なく笑った

作間くんには
私がクラスであんな扱いを受けているところなんて見られたくなかった

本当に最悪だ

作間「…俺は浮所先輩のことダサいだなんて思いません…」

｢作間くん…｣

作間くんなりの気遣いの言葉なんだろう
けど、作間くんの表情を見ると真剣そのものの
目だった

作間｢俺は助けたって思ってないけど…浮所先輩が俺に助けられたって思ってくれたならすごく嬉しいです｣

「…」

作間「それに俺…先輩がアイツらに掃除当番押し付けられているところ見てません」

「えっ…？」

驚いた

「けど…さっき見たって…」

作間「あれは嘘ですよ」

「えっ!?」

どういうこと？

作間「先輩驚きすぎ笑

ていうか、ほんとにその現場目撃してたらぼーっと見らずにそのままその現場に割り込みます笑」

｢押し付けじゃなくて…ほんとに私が単に掃除当番忘れてただけならどうしたの？｣

作間「それは絶対ないです」

何故か作間くんは自信満々に言う

「なんでそんなはっきりー」

作間｢俺が教室入った時、先輩…困ってた顔してた
し第一、浮所先輩は人との約束とか絶対に忘れな
い、責任感の強い人だから…掃除当番を忘れるなんてこと絶対にありえないかなって…｣

そう言って真顔でただ
私をじっと見つめる作間くん
見つめられすぎて、彼の大きな瞳に吸い込まれそうになる

「作間くん…」

こんな時に思うのってだいぶおかしいけど
やっぱり顔が整ってる
そう思って意識すると
余計に胸の高鳴りが止まらない

やばい…

作間「先輩が思うほど、先輩は物忘れ酷くないですよ ’本当は’」

そう言ってフフっと微笑む彼

｢ありがとう…｣
何気ない作間くんの励まし

けれど
この時の私は理解出来なかった

作間くんが言った

『本当は』

という言葉の重さを

…
作間｢先輩って目悪いんですか？｣

「そりゃ眼鏡かけてるから当然だよ」

作間「実は俺も」

そう言っててへっと笑う彼

「え…さっき目いいって」

作間「嘘ですよあれ」

嘘？あんな堂々とした表情で言ってたのに

作間「演技うまかったですか？」
「うん、かなり笑」