感情欠如の幹部様【wrwrd!】 (ページ21)

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二十話ページ21

　
その日は朝から雨が降り続け，人々は傘をさし，小走りで町をせわしなく移動していた。そんな中，一人路地裏の前で傘をさし佇むA。
　

『雨の音，暗く人目につかない場所，血の匂い……懐かしい匂いがする……』
　

一人天(そら)を見上げて呟くと一歩，また一歩と路地裏へ踏み込んでいった。その時の彼女の顔は，嬉しさでほころんでいた。

　
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「Aがまだ帰ってないやと？」
　

「あぁ，二時頃から城を出て街へ行くーって言ってたんやけど……もう五時やし，いくら夏やからってあと二時間くらいで暗くなるやろ？もうそろそろ帰ってこーへんと心配やで…」
　

総督室で，心配そうな顔をして考え込む二人。資料を届けに来たトントンがグルッペンにAがまだ帰ってきていないと伝えたのだ。
　
彼女も，もう16，しかし彼らにとっては妹のような存在であるA。
　

「幹部皆で手分けして探すか？」
　

「せやなぁ……」
　

グルッペンの提案に，トントンは其れが最善だと考えゆっくり頷いた。彼の溜息は，雨音に掻き消されていった。