ルフに魅入られた者 (ページ3)

今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:1,054 hit

１話(主人公side) ページ3

｢え………｣

目の前には洞窟が広がっている。
なぜ。

いつものように布団に入り就寝したはずなのに。

洞窟の底や壁は鏡のようになっていて自分を映し出している。

一瞬夢だと思ったが、夢にしては、意識がはっきりしすぎていて。
頬をひっぱってみるが、しっかりと頬に鈍い痛みがはしった。
またそれと同時に、夢ではないという現実に言いようもない寂しさを感じていた。

｢とりあえず、進んでみるしかないか…｣

寂しさから逃れるように、一言つぶやき、歩き出した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1人洞窟を進みはじめて、長い時間が経過した。
自然と疲労や空腹は感じない。

ただ、全体が鏡のようになっているこの洞窟は精神を蝕んでいくような気がして、怖くなる。

｢～♪｣

そんな寂しさや不安、恐怖から逃げるように、歌を口ずさみながら進む。

しばらくすると、巨大な扉が目の前に現れた。

｢すごい……｣
思わず、感嘆の声がもれる。

なんとなく扉に触れてみると、一つの言葉が頭の中に浮かんできた。
そして、その言葉をつぶやかなければいけないような気がして、声に出してみた。

｢ひらけ、ごま｣

すると、凄い音を立てて扉が開きはじめた。
なのに、何故か不思議と驚きを感じない。

十数秒かけて開ききった扉に向かって、ゆっくりと歩き出した。