塔の上のお姫サマ。【神威】

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その女に近づく。俺の足が動くに合わせて女は表情を強ばらせる。しかし、ある距離まで来た所で彼女の表情は怯えから警戒に変わった。少し驚いて立ち止まる。



『······貴方、何者ですか···？』


神威｢ん？｣


『なんですか？その、······こびり付いたような血の匂いは···、』



ヘェ、無知な囚われのお姫サマかと思ったけど血の匂いを知っているとは。なかなか、面白いかも。



神威｢でもね、······｣


『え、·········ッ!!』



一気に距離を縮めて、やはり見た目通り細い折れてしまいそうな腕を掴みあげ、彼女の首に手を回し壁に押し付ける。真っ赤な瞳が俺を射抜く。



神威｢遅いよ？気づくのが。あの距離で気づいても何もかも遅い。ほら、もう君は殺されちゃってるんだよ？｣


『······っぅ、』


神威｢なんか、期待ハズレだなぁ。最強の戦士を産む女だからもう少し強いのかと思っていたけど、俺の勘違いだったみたい。｣



揺れる瞳。薄く膜が張ってあり、女は苦しそうに顔を歪める。更に力をこめれば、折れてしまいそう。首も、腕も、唯一光を放つその瞳も。



神威｢君は｢夜兎｣を知らないようだね？教えてあげようか。｢夜兎｣っていうのは、戦場を住処とし闘いを、血を好む種族なんだよ。でも君は駄目だね。


血に嫌悪感を持ち、傷つく事が嫌いみたいだ。おまけに力も、野望もない。何故此処から逃げ出そうとしない？階段を下ればすぐそこに扉がある。誰もお前の脱走を邪魔したりしない。ねぇ、なんで？｣



誰もお前を助けになんて来ないのに、一体どんな夢を見てるのかな？



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