酸いも甘いも心無し【沖田総悟】

07 ページ8

.



どうやらこの結婚生活は前途多難のようだ。

そう思って何度溜息を吐いたことか。真選組に来てからというものの、私の心は晴れないままだ。



『……はぁ、』

「おい、ンな溜息つくんじゃねェよ。辛気くせェ」

『あ、すみません、土方さん』



この真選組の副長だという土方十四郎。彼とは何かと面識があった為すぐに打ち解ける事が出来たけど……未だに理解できない。

鬼の副長と呼ばれる彼が何故部下の総悟さんに命を狙われ、挙句咎めないのか。



『―――もしかして、Ｍなんですか？』
「何の話だ？」



ポロリと口から落としてしまった言葉に慌てて「何でもないです」と弁解を入れる。「集中しろ」と軽く頭を小突かられるが、何分彼の打撃は驚く程に優しいのだ。


―――全く、“あの人”とは大違いだな、と。
起きるのにも30分はかかり、誠意も欠片もない、サボりに出掛けては神出鬼没で屯所に帰ってくる―――総悟さんとは大違いだ。



(……どうせ結婚するなら、土方さんとがよかった)



人を比べるのはいけないと分かっている。分かっているんだけど、どうしても彼への憎まれ口は止まらないのだ。

また余計な事を考えてしまった、と頭を振って手元の資料に目を落とす。無数に羅列した文字はここ最近の犯罪記録なのだけれど…



『――――――土方さん、』

「なんだ」

『あの、どうしてこのリストに総悟さんが？』

「アイツはそこらでバズーカ打っ放すからな」

『要注意人物に入ってるんですけど』

「常習犯だからな」



嘘でしょう、だって警察なんですよあの人。と、言おうとしてやめた。

此処で2週間ほど彼の傍に居るが……納得する他ないのだろう、総悟さんの日課を知ってしまえば。

08→←06

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す