熱 ページ43
伊東side
会う度に毎度頭を撫でてくる声優、もといAちゃんと同じ現場での収録をたった今終えた。
可愛いだけじゃなく、演技もずば抜けて上手で完璧すぎるなぁとしみじみ思い、Aちゃんに目を向ける。
…ん?
なんだか今日は少し様子が違くないか?
ぼーっとしてるというか、目が虚ろというか…
それにいつもなら、視線や気配に敏感なAちゃんをこれほど凝視していたらバレるはずだ。
それなのに気がつかない。やはり何かあったのか。
そんな思考を巡らせていると、荷物を持って椅子から立ち上がったAちゃんがふらりと倒れそうになった。
「…あれ、伊東さん?」
伊東「…ひ、冷や汗かいた……大丈夫?」
間一髪、なんとかAちゃんを抱えて倒れることは塞ぎ、思わず自分に賞賛を送った。
だが、何とも言わないAちゃんに疑問を抱き、顔を見てみるとやはりぼんやりとしている。心做しか頬も赤い。
…もしかして熱か?
伊東「ごめん、Aちゃん触るよ」
先程座っていた椅子に座らせ、Aちゃんのおでこに触れると、平熱とは思えないほどの熱さに目を見開いた。やっぱり熱だったか。
伊東「ちょ、すごい熱だよ、病院」
行こう、という言葉を口にしようとした瞬間、Aちゃんがおでこに当てていた俺の手を自身の頬に当て、目を瞑った。
「…いとうさんの手、きもちい」
思わず生唾を飲んだ。
”俺の手が冷たくて、体温が高いAちゃんにとっては気持ちがいい”という意味なのは分かっている。分かっているんだ。
だが、語弊が生まれかねない言葉を口にする彼女に対し、一気に体温が上がってしまう。
熱がある彼女に失礼だが、扇情的な表情でそんなこと言うのはやめていただきたい。自分に嫌気がさす。
邪な感情を振り払おうとするが、Aちゃんと目が合う度に心臓が加速し、頬の染まりも抜けない。
俯いて心を落ち着かせようとする俺に対し、Aちゃんは言った。
「んふふ、いとうさんも真っ赤」
赤く染まった顔に、少し涙のたまった薄目。そして手から感じる熱い体温。
このままだと本当に最低なヤツになりかねないので、Aちゃんの頬に当てられた手を彼女の足にまわす。
俗に言うお姫様抱っこというやつだ。
余計な感情を勢いで振り払う俺と、お姫様抱っこをされて驚くAちゃん。
伊東「…絶対今度仕返しするからね」
さて、さっさと病院に向かうとしよう。
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名無し - 更新ありがたやー!!! (5月6日 11時) (レス) @page50 id: 5d4eebdee6 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - ありがたい…今まで通り夢主大好きな梅原さんをよろしくお願いします (4月8日 0時) (レス) @page49 id: 5d4eebdee6 (このIDを非表示/違反報告)
彩弥 Ayami(プロフ) - いつも読ませていただいてます!!良平さん最推しなので良平さん登場させていただけるの嬉しいです!!! (3月16日 17時) (レス) id: 0161f172e7 (このIDを非表示/違反報告)
えりちゃん - 八代くん出してくれるの嬉しいです! (1月24日 0時) (レス) id: f4342f2c6a (このIDを非表示/違反報告)
キジ(プロフ) - コメント失礼します!千晃くんの小説少ない中、最高のきゅんきゅんエピソードばかりで愛読してます🥹 (12月5日 17時) (レス) id: 69c00db8f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナゴミ | 作成日時:2023年8月25日 21時