清々しく、終わろう？ ページ31
．
｢や、あの、でも…
今から行かなくちゃ行けないところが会って…｣
｢…あ、そっか。わりぃ。
じゃあ、これ。俺の家の鍵。
遅くになってもいいから。もってて。｣
赤いレザーのついた、
お洒落な鍵。
じゃあね、チャラリと鍵を
私の手に握らせたその人はヒラリと手を振った。
｢あの…ありがとうございます！｣
｢ん｣
今度は振り向かずに手を振った櫻井社長。
マンションを出ると、
そこには二宮先輩が立っていた。
｢よっ｣
いつもみたいに手を振る二宮先輩。
｢ごめんね、俺もおっさんと一緒に居たからお迎えパしられた。｣
｢ずっと……待ってたんですか？｣
｢うん、だって俺Aの事好きだもん｣
サラリとそんなセリフ。
貴方だけが言えるんだよ。
ううん、貴方だから言えるんだよ。
｢ありがとう…｣
｢その言葉、OKって受け取っていいの？｣
二宮先輩は意地悪に笑う。
｢…ふ、なんてね。
俺もうAのこと諦める。｣
｢……。｣
｢今だって、壊れるほど抱きしめたいけど。
…だから最後に１回だけ、キスしていい？｣
二宮先輩の初めて見る顔。
多分、
ほんとに私を思ってくれたんだろう、って顔。
うん、と黙って頷いた私の唇が、
あの薄くて柔らかい唇に包まれる。
二宮先輩は寂しそうな顔を一瞬だけして、
はい、終わり！と明るく笑った。
｢ありがとう｣
と私がいえば、
やっと笑った、と彼も笑った。
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作者名：みやび | 作成日時：2015年5月3日 23時
