51:最後の修行_1 ページ6
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柱の稽古が行われる場所は、大抵屋敷と繋がっている道場や、屋敷の近くの稽古場だったりと、基本は自身の家の近くの所で行われていた。
岩柱も例外では無く、彼が住んでいるという場所に来たのだが、指定された場所は山奥だった。
「なぁまだ!?」
「まだ、多分だけど」
「え〜」
山中で彷徨っていた天元を拾い、鱗滝さんと初めて会った日を彷彿とさせる山道を二人で歩いていく。
「あっ、滝!」
「うっわ!! なんだあれ!?」
「うわぁ……」
この合同強化訓練が始まってこう思うのも何度目だろうか。
天元に釣られて遂に声に出てしまった。
「おいおいガチかよ、あれ俺達もやんの!?」
「やるんでしょ、多分……」
「嫌だ〜!」
天元が滝壺で滝に打たれる彼らを見て、半分悲鳴のような声を出しながらその場に崩れ落ちた。
「メイクも髪も終わる!」
「そこ?」
「派手じゃなくなっちまうだろうが!」
一人で騒ぎ出した彼を放って滝の方へ近づいていくと、少し離れた川の横で大きな岩に張り付いた隊士達も見つけてしまった。
「おい、あれ明じゃね?」
いつの間にか後ろにいた天元が指をさした岩のところに、うつ伏せになって岩にしがみついている明を見つけてしまった。
話しかけようか迷ってると、後ろから勢い良く抱きしめられた。
「A〜、捕まえた〜」
夏香が嬉しそうに私を抱きしめながら横に動き、天元の方を軽く睨みつけながら指さした。
「宇髄来んの早くない? 不正した?」
「ド派手に突破して来たに決まってんだろ!」
「えー?」
「おいおい、俺を誰だと思ってんだよ」
「はいはい神ね、祭りの神〜」
夏香が彼を鼻で笑いながら、手で追い払う様な仕草をする。
この対応をされ慣れているのか、天元が余裕の表情で夏香にジリジリと近づいていっている。
「相変わらず天元の扱い雑だね」
「当たり前でしょ! こいつのせいで散々な目に合ってるんだから!」
「なんだと!?」
「この前の遊郭の後処理、誰がやったと思ってるの?!」
「それはごめん、ありがとう! でもそれとこれは違うだろ!」
「何言ってんのよ! だいたいあんたはね……!」
二人が仲良く喧嘩しているうちに、私はそそくさとその場を離れ、悲鳴嶼さんを探しに行く。
滝のそばまで行くと、火の中で岩をぶら下げた丸太を肩に担ぎ、手を前に合わせながらブツブツと何かを唱えている彼を見つけた。
「心頭…滅却すれば……火もまた涼し……ようこそ…我が修行場へ……」
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作者名:ゼパル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bf379540b81
作成日時:2023年8月24日 23時