三日月:鬼となったもの《下》 ページ17
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二人で夜道を駆け抜けながら、途中で見つけた弱そうな隊士を殺さず捕まえ、襲撃予定の位置に向かう。
「これからどうするんだ?」
「このまま鳴柱の片割れを狙うわ」
「片割れ?」
「そう、片割れ」
刹那が片目を閉じて立ち止まった。
「どうした?」
「う〜ん、本当はどっちでも良かったんだけど、黒髪の方にしましょう」
「なんで?」
「私の怨恨」
「……獪岳と面識があるのか?」
「ううん、今できたの。それにそんなに時間が無いもの。仕留めやすそうなやつが良いわ」
「そうなると、仮に朝まで粘られた場合はどうなるんだ?」
「そうなったら、無理やり記憶を弄りましょう。せっかくならハッキリ消すよりも、私たちの存在をぼやけさせた方が面白いでしょう?」
「性格悪いな」
「ふふ、それは褒め言葉として受け取っておくわね。……さて、そろそろ始めましょう」
刹那が得意げに笑い、捕らえていた隊士の頭を掴む。
「これが一番効率良いのよね」
ググッと頭に指を押し込み、奇怪な音を立てながら脳をかき混ぜていく。元鬼殺隊の柱としてこの光景を呆然と見ていることしか出来ないのが悔やまれるが、今俺が何かしたとしたら、この隊士がどうなるのか分からない。
それに、恐らく先に俺が無惨に殺されてしまう。
禰豆子やAのためにも、まだ死ぬわけにはいかない。
「へぇ、鬼殺隊は今柱と稽古してるらしいわ」
「人の記憶が見えるのか?」
「ええ、脳に直接触れれば全部見えるわ。私がそれを知れば、自動的に無惨様も知ることになる。結構役に立つでしょ?」
「成程な。これなら特別扱いされるのも納得がいく」
「ふふ、私はサポートに回るのが役目。元々そういう性格だったのが、血鬼術に影響したみたい。炭治郎も早く血鬼術使えるといいわね」
「えっ、すぐに使えないのか?」
「ん〜、わかんない。でも私は意識しないと使えないから、そういうものなのかと思ってたわ」
「なるほどな。試しに今なにか……」
「ちょっと、今は使っちゃダメよ。ここら辺一体が消し飛んだらどうするつもり?」
「そんなに強い威力のものが俺の血鬼術だと?」
刹那が隊士の頭から手を離し、彼の頭に開けた穴を撫でるように触って塞いでいく。
「強い鬼ほど、人間だった頃の出来事や思いが反映される。だから炭治郎の血鬼術は絶対に強いわ」
彼女は自身についた血を払い落とし、朗らかに笑った。
「仮に弱かったとしても、私がサポートしてあげるから安心しなさい」
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作者名:ゼパル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bf379540b81
作成日時:2023年8月24日 23時